【経営】サテライトオフィス導入の最適解|多拠点化は本当に必要か?
1. サテライトオフィス導入が再評価される理由
テレワークが広がったことで、「本社へ毎日通う」という従来の働き方は大きく変わりつつあります。企業は、社員がどこからでも働ける環境整備を進める一方で、対面でのコミュニケーション機会をどう維持するかという課題にも直面しています。
その中で注目されているのが サテライトオフィス です。駅近のワークスペースや地方拠点、小規模分室などの形態があり、通勤負担を減らしつつ生産性を高める手段として導入が進んでいます。しかし、サテライトオフィスは設置・運用コストも発生するため、「本当に必要なのか?」「何拠点が最適なのか?」と悩む企業も少なくありません。
本記事では、サテライトオフィス導入を検討する際の判断軸や運用ポイントを整理し、企業にとって最適な選択肢を導くための視点を提供します。
2. サテライトオフィスとは何か

サテライトオフィスとは、本社以外に設ける小規模な就業スペースを指し、社員が必要に応じて利用できる柔軟な働く場所として機能します。
もともとは外回りの多い営業職や、遠方の社員のために設置されることが多くありましたが、近年は“働き方改革の推進拠点”としての役割が強まっています。
企業がサテライトオフィスを設置する理由は、大きく次の3つに集約できます。
- 通勤時間の短縮による働きやすさ向上
- 採用力・定着率の強化
- 業務効率の向上と柔軟なワークスタイル実現
これらはいずれも生産性と人材確保に直結するテーマであり、サテライトオフィスは「人材戦略の一部」として位置づけられるケースが増えています。
3. サテライトオフィスの種類

サテライトオフィスと一口に言っても、目的や利用シーンによって形態が異なります。
それぞれの特徴を理解することで、自社に合った運用方式が見えてきます。
(1)社内専用型サテライトオフィス
自社専有の小規模な拠点を設置するタイプ。セキュリティが高く、まとまった人数の利用が想定される場合に適しています。地方拠点として利用するケースや、チーム単位の出社を実現したい企業に向いています。
(2)シェアオフィス型サテライト
外部のコワーキングスペースを法人契約し、必要な時だけ利用する方式。拠点数を一気に増やせるため、通勤負担の軽減効果が高い一方、費用管理がやや複雑になる場合もあります。
(3)地域密着型の小規模拠点
郊外・地方の特定エリアに “小さな支店” として設置し、地域雇用や顧客対応力の強化を狙うタイプ。特に地方採用を強化する企業から注目されています。
4. サテライトオフィス導入によるメリット

サテライトオフィスは、単に「働く場所を増やす」ための仕組みではなく、企業の働き方改革や人材戦略に直接寄与する投資です。本社機能だけでは補いきれない課題を解決し、社員の生産性やモチベーションを高める効果が期待できます。
ここでは、導入によって得られる代表的なメリットを4つの観点から整理します。
(1)通勤時間の大幅削減による生産性向上
サテライトオフィスの最大のメリットは、社員の通勤時間を短縮できる点です。特に、大都市圏では片道1時間以上かけて通勤する社員も多く、移動による疲労やストレスは生産性に直結する問題となっています。自宅近くや通勤経路上にサテライト拠点があれば、長時間通勤が解消され、業務開始時のコンディションが大きく改善します。
さらに、時間の削減だけでなく「天候や交通遅延に左右されない」という安心感も得られ、遅刻・欠勤の抑制にもつながります。社員のコンディションを整えるという意味で、企業にとって投資価値の高い施策だと言えます。
(2)採用競争力の強化
人材獲得競争が激しくなる中で、勤務地の柔軟さは求職者にとって大きな魅力となっています。「本社に毎日通う必要がない」「生活圏に近い拠点がある」という条件は、特にZ世代・子育て世代・郊外在住者から強く支持されます。企業が働く場所を選べる環境を提供することは、応募数の増加や採用単価の低下につながり、採用広報面でも強い訴求力を持ちます。
また、サテライト導入は「柔軟性のある組織」「働きやすさを重視する企業」というブランド形成にもつながり、内定辞退率の低減や定着率向上にも寄与します。
(3)災害・感染症対応の強化
複数拠点を持つことは、事業継続性の向上という観点でも有効です。災害や感染症の影響により本社が使用不能になった場合でも、サテライトオフィスが稼働していれば業務停止を避けられる可能性があります。特に、感染症においては「出社人数を分散させる」「人の密度を下げる」という観点から、小規模拠点の存在がリスク低減に直結します。
地方にサテライト拠点を設置しておくことで、都市部での災害時に代替拠点として活用できるなど、企業のレジリエンス強化にも大きな効果があります。
(4)顔を合わせたコミュニケーションの補完
フルリモートまたはリモート主体の企業では、「偶発的な会話の減少」や「関係性構築の難しさ」が課題になります。サテライトオフィスがあれば、メンバーが必要なタイミングで気軽に対面コミュニケーションを取ることができ、オンラインでは補いきれない情報共有や意思決定をスムーズに行えます。
また、本社へ行くほどではないが「少し集まりたい」「集中して議論したい」というニーズに応えられるため、ハイブリッドワークにおける“コミュニケーションの中間地点”として機能します。結果として、チーム力の維持やマネジメントのしやすさが向上し、組織運営が安定します。
5. サテライトオフィスのデメリットと注意点

サテライトオフィスは多くのメリットを持つ一方で、導入には慎重な検討が必要です。
特に多拠点化は管理の複雑さやコスト負担が増えやすく、導入後に「想定より使われなかった」「運用に手が回らない」といった課題が表面化するケースも少なくありません。
ここでは、企業が事前に把握しておくべき主要なデメリットと、その背景にある注意点を解説します。
(1)拠点数が増えるほど管理コストが増える
サテライトオフィスの課題として最も多いのが、運用管理にかかる手間とコストが想定以上に増える点です。拠点が複数になると、入退室管理・備品管理・セキュリティ対策・ネットワークメンテナンスなど、1拠点につき追加の管理項目が発生します。
また、社内専用型のサテライトを開設する場合には、清掃、設備保守、ルーターや複合機などの機器管理も必要になり、それらを誰が担当するのかを明確にしなければ運用が破綻します。社員数が多くない企業の場合、担当者の負荷が増えすぎて“管理できない拠点”となる可能性があります。
一見すると「小規模だから運用は簡単」と思われがちですが、複数拠点の同時管理は意外と複雑で、見えないコストが積み上がりやすい点に注意が必要です。
(2)利用が少ないと費用対効果が悪化する
サテライトオフィスの効果は“利用されて初めて価値が生まれる”ため、利用率が低いと費用対効果が大幅に下がります。実際、サテライト導入の失敗例で最も多いのが、「開設したものの、想定したほど利用されなかった」というものです。社員の生活圏に合わない場所を選んだ、アクセスが悪い、予約しづらい、用途が曖昧など、原因はさまざまですが、いずれも事前の実態調査不足が背景にあります。
特に専有型拠点は固定費がかかるため、利用率が低い状態が続くと経営的に負担となり、「閉鎖か継続か」という判断を迫られることになります。
導入前には、社員の勤務地・通勤経路・利用ニーズを綿密に把握し、実際の移動パターンに合った立地を選ぶことが欠かせません。
(3)情報セキュリティのリスク
サテライトオフィスでは、本社とは異なる場所で業務を行うため、情報セキュリティの管理が難しくなります。特にシェアオフィス型の場合、周囲に他社の利用者がいる環境下で業務を行うため、会話の漏えいや画面覗き見などのリスクが高まります。さらに、Wi-Fiのセキュリティ仕様が本社レベルではないケースもあり、外部ネットワークに接続することで情報漏えいの可能性が発生することもあります。
対策としては、VPNを必須にする、機密資料の閲覧禁止ルールを設ける、会議室以外でのWeb会議を制限するなど、ルールと技術対策の両方を整える必要があります。
セキュリティ対策を怠ると、利便性向上のために導入したはずのサテライトオフィスが、逆に企業リスクを増やす原因になりかねません。
6. 多拠点化は本当に必要か?判断基準を整理する

サテライトオフィスの導入は「流行」ではなく、あくまで 必要性に基づいて判断すべき経営テーマ です。
以下の観点をチェックすることで、自社が本当に導入すべきかどうかを整理できます。
✔ 導入の判断基準
□出社とリモートのハイブリッドが定着しているか
□社員の通勤負担が業務効率に影響しているか
□採用力強化の必要性が高いか
□商圏や顧客が広範囲に分散しているか
□災害・感染症リスクに備える必要があるか
これらの複数に該当する場合、サテライト導入は費用対効果が高くなる可能性があります。
7. 導入時のステップ

サテライトオフィスの導入を成功させるには、拠点の数や立地を感覚的に決めるのではなく、データと実態に基づいた段階的な検討が重要です。
本章では、失敗しない導入のために企業が踏むべき基本ステップを4つに整理し、それぞれのポイントを丁寧に解説します。
(1)社員ニーズの把握
最初のステップは、サテライトを「どこに」「どの程度」設置すべきかを見極めるためのニーズ調査です。多くの企業が立地だけを見て判断してしまいますが、実際には社員の生活圏や通勤動線を把握することが最も重要です。ヒアリング・アンケート・位置情報データを組み合わせることで、「実際に必要とされるエリア」が見えてきます。
さらに、「どのような用途で使いたいか」(集中作業・Web会議・チーム単位の出社など)を明確にすることで、拠点の規模やレイアウトの要件も整理しやすくなります。この工程を丁寧に行えば、利用率が低いサテライトを作ってしまうリスクを大幅に減らすことができます。
(2)運用モデルの設計
社員ニーズの把握ができたら、次に「どの方式で運営するか」を決めます。サテライトには、大きく分けて 専用型 と シェアオフィス利用型 があり、自社の業務内容やセキュリティ要件によって適したモデルが異なります。
専用型の場合は、家具配置やセキュリティ設備、清掃体制など、拠点運用の細かい設計が必要となります。一方、シェア型は設備面の負担が軽い一方で、周囲に他社がいるため情報管理のルールづくりが欠かせません。
また、利用ルール(予約方法、利用時間帯、会議室利用の制限、機密資料の取り扱いなど)を明確にし、社員が迷わずに使える仕組みを整えることで運用トラブルを防げます。運用モデル設計は、導入後の満足度と継続率を左右する重要な工程です。
(3)小規模なテスト運用を行う
サテライトオフィスは、いきなり複数拠点を開設するのではなく、まず1拠点からテスト運用することが成功の鍵です。テスト運用を行うことで、利用率・混雑時間帯・設備の不足・ルールの不備など、実際の運用でしか分からない課題が明確になります。
たとえば、予想以上にWeb会議の需要が多い、思ったより集中作業が行われない、アクセスが悪く利用率が伸びないなど、仮説と利用実態がズレることは珍しくありません。一定期間の試験運用データをもとに、必要機能の追加やレイアウト調整を行うことで、次の拠点展開に向けた精度の高い判断が可能になります。
(4)データにもとづき拡大判断を行う
テスト運用の結果を踏まえ、拠点数を増やすかどうかを合理的に判断します。感覚や印象だけで拡大を進めると、利用率が低い拠点を増やしてしまい、かえってコストを圧迫する結果につながります。
判断材料としては、次のようなデータが重要です。
- 利用率(全体・時間帯・曜日)
- 業務効率への影響
- 通勤負担の削減効果
- 社員満足度
- コスト対効果
特に、利用率は継続判断の基準となるため、予約システムや入退室データで客観的に確認することが必要です。これらのデータを総合的に分析することで、企業にとっての“適正拠点数”が明確になり、無理なく持続できるサテライト運用が実現します。
8. まとめ

サテライトオフィスは、テレワーク時代における新しい働き方の選択肢として、企業に多くの価値をもたらします。通勤負担の軽減、生産性の向上、採用力の強化、BCP対策など、導入によって得られる効果は広範囲に及びます。一方で、拠点数が増えるほど管理負荷が増す、利用率次第では費用対効果が下がる、セキュリティリスクをどう抑えるかといった課題も存在します。
重要なのは、サテライトオフィスを「流行だから導入する」のではなく、自社にとって本当に必要な規模と場所はどこか を見極める姿勢です。社員ニーズの調査、運用モデルの設計、テスト運用、データに基づく判断という手順を丁寧に踏むことで、過剰投資や運用失敗を避けることができます。
働く場所が多様化する今、サテライトオフィスは「社員がより働きやすく、企業の持つ力を最大化するための環境整備」として位置づけられます。
最も効果の出る拠点構成を見つけ、段階的に育てていくことこそが、多拠点化時代のオフィス戦略において最適なアプローチと言えるでしょう。
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