【設計】業務効率を高めるオフィスの考え方|働き方と空間を結び直す実務視点
1. 業務効率は「個人の工夫」だけでは限界がある
業務効率という言葉は、個人のスキルや工夫の問題として語られることが多くあります。しかし実務の現場では、どれだけ個人が努力しても、環境や仕組みが足を引っ張っている状態では、効率は頭打ちになります。
特にオフィス環境は、日々の業務を無意識のうちに左右しています。移動の多さ、探し物の時間、話しかけづらさといった小さなロスが積み重なることで、全体の生産性に大きな差が生まれます。
本記事では、業務効率を「個人の問題」ではなく「環境と設計の問題」として捉え直し、オフィス視点で業務効率を高めるための考え方を整理します。
2. 業務効率とは何を指すのかを整理する
業務効率を改善しようとすると、「効率化」という言葉だけが先行し、具体的に何を改善すべきかが曖昧になるケースが少なくありません。まずは、業務効率をどのように捉えるべきかを整理することが、実務上の第一歩になります。
ここでは、業務効率を考えるうえで押さえておきたい基本的な視点を整理します。
(1)スピードだけでなく「無駄が少ない状態」と捉える
業務効率というと、作業スピードを上げることが目的だと捉えられがちです。しかし実務では、単純に早く動くことよりも、無駄な時間や動作が発生していない状態をつくることが重要になります。
探し物に時間がかかる、移動が多い、待ち時間が発生するといった小さなロスは、一つひとつは目立たなくても積み重なると大きな非効率になります。業務効率とは、こうした無意識のロスを減らした結果として高まるものだと捉える必要があります。
(2)個人効率と組織効率を分けて考える
個人が効率的に仕事を進めていても、組織全体で見ると非効率になっているケースは少なくありません。たとえば、個人最適で作業を進めた結果、確認や共有に時間がかかり、全体のスピードが落ちることがあります。
業務効率を考える際には、個人の効率と組織全体の効率を分けて整理する視点が欠かせません。オフィス環境の改善は、特に組織効率に大きく影響する要素になります。
(3)「効率が高い状態」を言語化できているかが重要になる
業務効率を改善できている企業ほど、「何をもって効率が高いと言えるのか」を具体的に言語化しています。逆に、この定義が曖昧なままでは、改善策の評価も感覚的になりがちです。
たとえば、「移動時間が減っている」「確認作業がスムーズになっている」といったように、状態として説明できるかどうかが重要になります。効率の定義を共有することで、改善の方向性がぶれにくくなります。
3. 業務効率を下げているオフィスの典型的な要因
業務効率が上がらない原因は、個人のスキルや業務量ではなく、オフィス環境そのものに潜んでいるケースが多くあります。特に、日常的に繰り返される動作や行動が非効率な設計になっていると、小さなロスが積み重なり、全体の生産性を下げてしまいます。
ここでは、実務でよく見られる代表的な要因を整理します。
(1)業務動線とレイアウトが合っていない
オフィス内の動線が業務内容と合っていないと、無意識の移動が増え、時間と集中力を奪われます。特に、大規模なオフィスや部門が分かれている環境では、この影響が顕著に表れます。
ここで、動線と業務効率の関係を整理します。
▼業務動線と非効率が生じる例
|
状況 |
発生する非効率 |
|
収納が遠い |
探し物・移動時間が増える |
|
会議室が偏在 |
待ち時間・調整負荷が増える |
|
関係部門が離れている |
確認・相談が後回しになる |
このような状態では、一人ひとりの動きは小さく見えても、組織全体では大きなロスになります。業務動線を基準にレイアウトを考えていないことが、非効率の根本原因になっているケースは少なくありません。
(2)コミュニケーションが発生しにくい環境になっている
業務効率を下げる要因として見落とされがちなのが、コミュニケーションの取りづらさです。話しかけにくい配置や、気軽に打ち合わせができない環境では、確認や相談が後回しになり、結果として業務が滞ります。
ここで、効率を下げやすいオフィス環境の特徴を整理します。
<コミュニケーションを阻害しやすい環境の例>
- 席が固定されすぎて柔軟に集まれない
- 打ち合わせスペースが不足している
- 周囲の視線や音を気にして声をかけづらい
これらの要因が重なると、本来短時間で済む確認作業が長引き、業務全体のスピードが落ちていきます。コミュニケーションのしづらさは、業務効率の低下として必ず表面化するという認識が重要です。
4. 業務効率を高めるための空間設計の考え方
業務効率を高めるための空間設計は、見た目の整え方ではなく、日々の業務行動をいかに無理なく支えられるかが判断基準になります。効率が高いオフィスほど、社員が意識しなくても自然に動きやすい設計になっています。
ここでは、業務効率の観点から押さえておくべき空間設計の考え方を整理します。
(1)業務動線を基準に配置を考える
業務効率を高めるためには、まず「誰が、どこに、どのくらいの頻度で移動しているか」を把握する必要があります。動線を意識せずに配置されたオフィスでは、不要な移動や探し物が日常的に発生します。
業務動線を基準に配置を見直すことで、移動時間の短縮だけでなく、集中力の分断を防ぐ効果も期待できます。効率的な動線は、業務の流れを止めない設計と言い換えることができます。
(2)集中とコミュニケーションを切り分けて設計する
業務効率を考えるうえで重要なのは、すべての業務を同じ環境で行おうとしないことです。集中が必要な作業と、相談や打ち合わせが発生する業務では、求められる環境が異なります。
一つの空間ですべてを賄おうとすると、どちらも中途半端になりがちです。集中とコミュニケーションを切り分け、それぞれに適した空間を用意することで、業務の切り替えがスムーズになります。
(3)「すぐ使える場所」が業務スピードを左右する
業務効率が高いオフィスでは、「必要なものにすぐ手が届く」状態が意識的につくられています。収納や共有物の位置が遠いだけで、作業は想像以上に中断されます。
ここで、業務効率を下げにくい配置の考え方を整理します。
<業務効率を高めるために意識したい配置のポイント>
- よく使うものは動線上に配置する
- 共有物は使う人の近くに集約する
- 使用頻度が低いものは奥にまとめる
こうした基本的な配慮の積み重ねが、日常業務のスピードと安定性を支えます。
(4)運用でカバーしなくて済む設計を目指す
効率が落ちているオフィスほど、「ルール」や「工夫」で運用カバーしようとする傾向があります。しかし、運用に頼りすぎると、担当者の負荷が増え、定着しにくくなります。
業務効率を高める空間設計とは、特別な説明や管理がなくても、自然に効率的な行動が取れる状態をつくることです。設計段階で無理がないかを見直すことが、長期的な効率維持につながります。
5. ワークスタイル分析が業務効率改善の起点になる
業務効率を高めるための施策は、感覚や理想論ではなく、実際の働き方を起点に考える必要があります。そのために欠かせないのが、ワークスタイル分析です。分析を行うことで、「なぜ非効率が起きているのか」を構造的に捉えられるようになります。
ここでは、ワークスタイル分析を業務効率改善にどう活かすべきかを整理します。
(1)業務の実態を把握することが最優先になる
業務効率が下がっている原因は、「忙しい」「人が足りない」といった表面的な印象だけでは見えてきません。まず必要なのは、誰がどの業務にどれくらいの時間を使っているのか、どの作業で滞留が起きているのかを把握することです。
ワークスタイル分析によって、会議に時間が取られすぎている、移動や待ち時間が多いといった実態が明確になります。実態を把握せずに改善策を考えることが、最も非効率な行為だと言えます。
(2)業務内容と空間のズレを可視化する
分析を進めると、業務内容とオフィス空間が噛み合っていないケースが多く見えてきます。集中作業が多いにもかかわらず静かな場所が不足している、短時間の打ち合わせが多いのに気軽に使えるスペースがない、といったズレです。
こうしたズレは、社員の努力では解消しにくく、空間側を見直す必要があるサインでもあります。分析結果を通じて、どの業務にどの空間が必要なのかを整理することが重要になります。
(3)効率改善の優先順位を決めやすくなる
業務効率の課題は、同時にすべてを改善しようとすると、かえって混乱を招きます。ワークスタイル分析を行うことで、どの非効率が業務全体に与える影響が大きいのかを判断しやすくなります。
影響度の高いポイントから手を打つことで、限られた予算や時間の中でも、効率改善の効果を実感しやすい施策を選びやすくなります。
(4)分析を一度きりで終わらせない視点が重要になる
ワークスタイル分析は、一度実施して終わりにするものではありません。働き方や業務内容は、組織の成長や環境変化によって変わっていきます。
定期的に分析を行い、現状とズレが生じていないかを確認することで、業務効率の低下を早期に防ぐことができます。分析を継続的な改善の起点として位置付ける姿勢が、安定した業務効率につながります。
6. 不動産・コスト視点で見る業務効率の考え方
業務効率は、働き方やオフィス環境の問題であると同時に、不動産コストの使い方そのものとも深く関係しています。効率が低い状態は、目に見えにくい形で賃料や固定費の無駄として表れます。
ここでは、業務効率と不動産・コストの関係を、整理しやすい形でまとめます。
▼業務効率と不動産・コストの関係整理
|
観点 |
業務効率が低い状態 |
業務効率が高い状態 |
|
面積の使われ方 |
使われないスペースが多い |
稼働率を前提に設計されている |
|
賃料の捉え方 |
面積単価のみで評価 |
業務成果とのバランスで評価 |
|
移動・動線 |
無駄な移動が多い |
業務動線が最適化されている |
|
会議・打合せ |
調整や待ち時間が発生 |
必要な場がすぐ使える |
|
内装投資 |
見た目重視で効果不明 |
効率改善を目的に投資 |
|
運用コスト |
ルールや管理で補っている |
空間自体が効率を支えている |
このように見ると、業務効率の低下は単なる働きにくさではなく、不動産コストの使い方が最適化されていない状態だと言えます。逆に、業務効率が高いオフィスでは、同じ賃料・同じ面積でも、得られる成果や納得感が大きく異なります。
重要なのは、業務効率を「努力で上げるもの」と捉えるのではなく、コストに見合った使われ方ができているかという視点で評価することです。この視点を持つことで、オフィス改善や移転の判断が、より経営に近いものになります。
7. 業務効率が高いオフィスを実現している企業の共通点
業務効率が高いオフィスを実現している企業には、特別な設備や最新のデザインがあるわけではありません。共通しているのは、業務効率を「社員の頑張り」に委ねず、環境や仕組みで支えるものとして捉えている点です。
こうした企業では、効率が下がったときに個人の努力不足を疑うのではなく、「空間や運用に無理がないか」という視点で原因を探ります。そのため、改善の方向性が属人的にならず、組織全体で共有しやすくなっています。
ここでは、業務効率が高いオフィスを実現している企業に共通する考え方を整理します。
<業務効率を高めている企業の考え方>
- 働き方を前提に空間を設計している
- 業務とレイアウトを定期的に見直している
- 集中と連携のバランスを意識している
- 効率を感覚ではなく実態で判断している
これらの企業では、オフィスを固定的な完成形として扱っていません。業務内容や働き方が変われば、空間も見直すべきものだという認識が共有されています。そのため、レイアウト変更や運用調整に対する心理的ハードルが低く、改善が継続しやすくなっています。
また、「集中できる」「話しかけやすい」といった感覚的な評価だけでなく、移動時間や滞留時間、利用頻度といった具体的な行動データをもとに判断している点も特徴です。これにより、施策の効果を説明しやすく、社内の納得感も高まります。
業務効率が高いオフィスを実現している企業に共通するのは、効率を一時的な改善テーマとして扱わず、運用と設計をセットで継続的に見直している姿勢です。この考え方が、結果として安定した業務効率と働きやすさの両立につながっています。
8. まとめ
業務効率は、個人の工夫や努力だけで高められるものではありません。オフィス環境や空間設計、働き方との整合性が取れていなければ、改善には限界があります。業務効率を左右しているのは、日々の行動を無意識に支えている環境そのものです。
効率を高めるためには、まず業務の実態を把握し、無駄な移動や待ち時間、確認作業がどこで発生しているのかを整理する必要があります。そのうえで、業務動線や空間の役割を見直し、集中とコミュニケーションを切り分けた設計を行うことが重要です。
また、業務効率は不動産・コストの使い方とも直結しています。使われていない空間や非効率なレイアウトは、そのまま固定費の無駄につながります。効率が高い状態とは、コストに見合った使われ方ができている状態だと言えます。
業務効率が高いオフィスを実現している企業は、効率を感覚ではなく実態で捉え、運用と空間をセットで見直し続けています。この視点を持つことで、業務効率の改善は一時的な施策ではなく、組織全体の生産性を支える継続的な取り組みになります。
業務効率を高める第一歩は、働き方と空間の関係を冷静に見直すことです。オフィスを「働きやすい場所」ではなく、業務を前に進めるための仕組みとして捉え直すことが、これからの実務では重要になるでしょう。
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