【設計】企業規模別の適正オフィス面積|人員配置・働き方から導く計算方法
1. オフィス面積の最適化が求められる背景
働き方の変化が加速する中で、企業が確保すべきオフィス面積は従来の「社員数×固定席」という単純計算では成り立たなくなっています。リモートワークやフリーアドレスの普及によって、出社人数が日によって大きく変動する企業も多く、従来の面積設定のままでは過剰な固定費を抱えることにつながります。
一方で、コミュニケーション不足や席数不足が業務効率を低下させるケースもあり、単純に「縮小すればよい」という話でもありません。企業にとって重要なのは、働き方の実態・業務特性・将来の組織規模を踏まえたうえで、最適な面積を“科学的に”導き出すことです。
本記事では、企業規模別に適正面積を判断するフレームと、働き方に応じた面積算出の方法を整理し、実務に落とし込むためのポイントを解説していきます。
2. 適正面積を決める3つの主要パラメータ

オフィス面積を最適化するためには、単に社員数を基準にするのではなく、働き方や業務特性に基づく複数のパラメータを掛け合わせて判断する必要があります。特に、出社率・席の運用方式・会議需要の3点はオフィス計画の精度を大きく左右する要素です。
これらを正しく理解することで、過不足のない面積算出が可能になります。
(1)出社率と業務特性
出社率は面積計画の基盤となる数値であり、実態に合わない前提を置くと大きな誤差を生みます。例えば、平均出社率が60%でも、部署ごとに変動が激しい場合はピーク日に対応できない可能性があります。
また、来客対応が多い部署や開発部門のように専用環境が必要な職種は、単純に席数を削減できない特性があります。正確な出社率と業務特性の把握こそが最適面積の第一歩となります。
(2)座席運用方式(固定席かフリーアドレスか)
固定席運用では、基本的に社員数分の席を確保する必要があり、面積は最も大きくなります。一方で、フリーアドレスを採用すると、実際の出社率に応じた席数設定が可能になり、効率的な空間運用が実現できます。
特に、リモートワークが浸透している企業では席数を大胆に減らせるケースが多く、同じ人数でも必要面積が大きく異なります。どの席運用方式を採用するかは、コスト構造を左右する重要な判断です。
(3)会議室・共有スペースの必要量
会議室需要は企業によって差が大きく、業務の性質や打合せの頻度によって大きく変動します。特に近年は小規模ミーティングの増加により、従来よりも多くの“1〜4名向け会議スペース”が求められるようになっています。
また、オープンミーティングエリアの整備状況によっても必要な会議室数は変わるため、単なる数合わせではなく「どの種類のミーティングがどれだけ行われているか」を把握した上で面積に反映することが求められます。
3. 企業規模別に見る標準的な席数と面積の目安

企業規模ごとに求められる面積の傾向は異なります。
ここでは一般的な目安を整理します。
(1)小規模企業(〜50名規模)
小規模組織は変化に強く、レイアウト変更も柔軟にできるため、最適面積を調整しやすいフェーズです。
<特徴>
◆フリーアドレス運用と相性が良い
◆会議室は最小限で十分
◆コミュニケーションしやすい一体型レイアウトが効果的
<面積の目安>
◆1名あたり:約1.0〜1.5坪
◆来客が多い企業は受付・会議スペースをやや広めに確保
(2)中規模企業(50〜200名規模)
部署数が増え始め、会議室・共有スペースのバランスが重要になる段階です。
<特徴>
◆部署間の動線設計が生産性に影響
◆会議室ニーズが急増しやすい
◆固定席とフリーアドレスの併用が効果的
<面積の目安>
◆1名あたり:約1.3〜1.8坪
◆チームワーク業務が多い企業は会議・交流エリアを多めに設定
(3)大規模企業(200名以上規模)
業務内容が多様化し、ハイブリッドワークの影響も顕著に表れるフェーズです。
<特徴>
◆小会議室の需要が特に増える
◆部署間移動が増えるため動線計画が重要
◆フリーアドレス導入の効果が大きい
<面積の目安>
◆1名あたり:約1.5〜2.2坪
◆利用率データを基にエリアごとに調整することが必須
4. 働き方に応じた面積算出のステップ

適正なオフィス面積を導き出すためには、「なんとなくの感覚」や「従来実績の踏襲」ではなく、明確なステップに基づいた算出プロセスが不可欠です。働き方データを分解し、部門特性や将来計画と照らし合わせることで、過不足のない面積計画が可能になります。
以下の4つのステップを踏むことで、精度の高い面積算出が実現できます。
(1)現状の出社率・利用率を可視化する
まず実態を把握するため、執務席の利用率、曜日別の出社率、会議室の稼働状況などをデータとして収集します。これが曖昧だと、面積計画は大きくぶれてしまいます。
特に、ピーク日と平均値の差を確認することが重要で、最大利用時を基準に席数を設定すべきか、またはフリーアドレスにより吸収できるかといった判断材料になります。
(2)将来の働き方を設定する
現状の働き方だけでなく、3〜5年後にどのような働き方を想定するのかを明確にします。リモートワークの割合、採用計画、部門構成の変化など、将来の組織像を踏まえた面積設計が必須です。
このフェーズが曖昧なまま進めると、早期に不足が生じたり逆に過剰面積を抱えることになり、固定費増大の原因となります。
経営戦略とオフィス戦略を接続する重要なプロセスです。
(3)部門ごとの必要席数を算出する
部門ごとに出社率・業務特性・座席運用方式の違いを反映し、適正な席数を計算します。全社員を一律に扱うのではなく、部署単位での分析を行うことで精度が大幅に向上します。
例えば、営業部は外出が多いため席数を少なめに設定でき、逆に内勤部門は席数を確保する必要があります。“部門別の席数ロジック”を作ることで無駄のない計画が可能になります。
(4)共有スペースと会議室の必要量を加算する
最後に、執務席以外の面積として必要となる会議室・オープンミーティング・リフレッシュスペースなどを追加します。
これらは業務の質に直結するため、決して軽視できません。
小会議が多い企業では1〜4名向けスペースを厚めに配置する必要があり、逆に来客の多い企業では大型会議室や応接室を重視する必要があります。会議需要のパターンを可視化することが面積計画の完成度を高める鍵です。
5. 会議室・オープンスペースの最適比率をどう決めるか

適正面積を算出する際に最も誤りが生じやすいのが「会議室とオープンスペースのバランス」です。働き方の変化に伴い、求められる会議の種類・回数・人数構成が大きく変わっているため、従来の基準をそのまま当てはめるとミスマッチが起きやすくなります。
ここでは、比率決定の考え方を整理し、実務に落とし込みやすいポイントを示します。
(1)会議ニーズを可視化し、小会議中心の構造を理解する
近年の働き方では、1〜4名での短時間ミーティングが増加しており、会議室需要の約70%を占める企業も少なくありません。小会議が増えているのに大型会議室ばかりを配置すると、稼働率が低下し、スペースが非効率になります。
そのため、まずは会議室日志や予約データを分析し、「誰が・何名で・どれくらいの時間を使っているのか」 を把握することが最適比率検討の第一歩となります。
(2)オープンスペースとの組み合わせが最適解を生む
会議室不足の多くは、短時間の相談やカジュアルな打合せが個室に集中することが原因です。オープンスペースを整備することで、これらの用途を個室から置き換えられ、結果として会議室の数を絞ることが可能になります。特にフリーアドレスを導入する企業では、“オープン6:会議室4” といったハイブリッド配置が効果的で、企業によっては会議室数を従来の6割程度に抑えられたケースもあります。
企業によっては 会議室比率を従来の6割→4割へ 減らし、運用効率を高めている例もあります。
(3)会議室タイプ別に必要比率を算出する
具体的な面積計画を行うには、会議室をタイプ別に分類し、想定ニーズに合わせて必要数を算出することが効果的です。
▼会議室タイプ別の用途と推奨比率
|
会議室タイプ |
主な用途 |
推奨比率 |
ポイント |
|
1〜4名小会議室 |
打合せ・1on1・説明 |
50〜70% |
予約の大半を占めるため厚めに配置 |
|
6〜8名中会議室 |
チーム会議 |
20〜30% |
需要は減りつつあるが一定必要 |
|
10名以上大会議室 |
部門会議・社内発表 |
5〜10% |
稼働率が低いので最小限に設定 |
|
オープンミーティング |
カジュアル打合せ |
面積全体の10〜20% |
会議室圧迫を防ぐ上で必須 |
ポイントは「大きな会議室を作り過ぎない」ことです。
(4)業務内容によって比率を調整する
創造系業務の多い企業ではブレストや短時間ミーティングが多く、オープンスペースを多めに設定することが効果的です。一方、金融や法務など機密性が必要な部門が多い企業では、個室を多めに確保する必要があります。
また、来客が多い企業では応接機能が重要になるため、外部向けの中会議室を追加するなど、業務特性に応じて柔軟に比率を調整することが求められます。
“自社の会議パターンを知ること”が最適比率の出発点となります。
6. 部門構成と業務特性から導く面積調整の考え方

企業ごとに業務内容や働き方のクセは大きく異なるため、単純な数値計算だけでは最適な面積は導けません。特に、部門の役割・業務量・外出頻度・機密性などの違いにより、必要な席数やスペースの種類は大きく変わります。
ここでは、部門ごとの特性を踏まえて最適面積へ調整する際の考え方を整理します。
(1)内勤中心の部門と外勤中心の部門で席数が変わる
営業部やフィールドワーク中心の部門では、外出が多いため固定席を持たせる必要がないケースが多く、フリーアドレスの効果が最も得られます。こうした部門では席数を社員数の50〜70%まで削減しても運用が成立することがあります。
一方、経理や総務、カスタマーサポートなど内勤比率の高い部門は、出社率が安定しているため席数を確保しなければ業務に支障が出ます。部門別に“出社の必然性”を整理することで、過不足のない席数設定が可能になります。
(2)ハイブリッドワーク導入企業は席数を大胆に削減できる
リモートワークが浸透している企業では、出社率が日によって大きく変動するため、席数を出社人数のピークに合わせると過剰に広いオフィスになりがちです。ここでは出社パターンの分析が非常に重要になります。
特に、週2〜3日の出社を基本とする企業では、“席数80%以下” の運用でも問題なく成立するケースが多く、空いた面積をコラボレーションエリアへ転換することで生産性が向上することもあります。ハイブリッドワークは単なるコスト削減ではなく、オフィスの機能改善にもつながるのです。
7. 面積計画の失敗パターンとその回避策

面積計画では、初期判断を誤ると長期間にわたり非効率な環境と余分な固定費を抱えるリスクがあります。
ここでは、よくある失敗と、その理由、そして具体的な回避策を明確に整理します。
(1)平均出社率だけで計算してしまう
失敗の原因:
平均値はピーク日の状況を反映していないため、実際の最大出社日に席が不足する。
曜日差や部門差も見落としやすく、実態を正確に反映できない。
回避策:
- ピーク出社日(最も出社が多い曜日)のデータを必ず取得する
- 部門別の出社パターンを分けて分析する
- ピーク席不足分をオープンスペースで吸収できるか検討する
これにより、過剰面積を抑えつつ“足りないリスク”を回避できます。
(2)会議室需要を過小評価してしまう
失敗の原因:
従来の固定席文化から切り替えた企業で多く発生する誤算。
フリーアドレス導入後は小会議の増加により、会議室が常に満室状態になりやすい。
回避策:
- 会議ログ(人数・時間・用途)を事前に収集する
- 小会議室とオープンミーティングの割合を増やす
- 大会議室は最小限にし、空間効率を最大化する
“必要な会議の種類”を明確にすることで無駄のない比率が決められます。
(3)成長計画を織り込まないまま面積を決める
失敗の原因:
現状の人数だけで計算すると、1〜2年後に必ず不足が発生し、再移転やレイアウト変更費用が必要になる。
回避策:
- 最低でも1〜2年先の採用計画を面積に反映する
- 余白スペースを「可変エリア」として設計する
- 必要に応じてフリーアドレス比率を調整できる構造にする
長期視点を持つことで、結果的にコストも運用負荷も抑えられます。
(4)部門特性の違いを考慮せず、一律に席配分してしまう
失敗の原因:
外勤が多い部門と内勤中心の部門を同じ基準で考えると、席数の過不足が必ず発生する。
回避策:
- 部門別に「出社の必然性」を分析する
- 営業など外出多め部門は席数を減らし、内勤部門は確保する
- 部門別に最適席数を算出し、エリア区分の設計に反映する
これにより、無駄な固定費の増加を防ぎ、利用効率が向上します。
8. まとめ

適正なオフィス面積を導き出すことは、単なるスペースの計算ではなく、働き方の最適化と固定費コントロールを両立させる経営テーマです。出社率・会議の発生頻度・部門特性など、働き方データを丁寧に分析することで、無駄のない面積と必要な機能を両立できます。
また、企業規模別の目安に頼るのではなく、自社に合った算出プロセスを構築することこそが、長期的なコスト最適化と社員のパフォーマンス向上につながります。適正面積の見直しは、組織の成長と働き方変革を支える重要な投資なのです。
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