【費用】デザイン費をかけるべきポイント・削るべきポイント|オフィス投資を失敗させない判断軸

1. デザイン費は「配分」で決まる

オフィスづくりにおいて、デザイン費は判断が最も分かれやすい項目です。コストを抑えたいという意識が強い一方で、「安っぽく見せたくない」「企業イメージを損ないたくない」という思いもあり、判断が感覚的になりがちです。

しかし実務上重要なのは、デザイン費をかけるか削るかではなく、どこに配分するかという視点です。すべてに費用をかけることも、一律に削ることも、どちらも失敗につながりやすくなります。

本記事では、デザイン費をかけるべきポイントと、合理的に削るべきポイントを整理し、投資対効果の高いオフィスづくりの考え方を解説します。
 

2. デザイン費を考える前に整理すべき前提条件

デザイン費の配分を正しく判断するためには、「何にいくらかけるか」を考える前に、必ず整理しておくべき前提条件があります。この整理が不十分なまま進めると、完成後に「思っていた効果が出ない」「なぜこの費用が必要だったのか説明できない」といった問題が起きやすくなります。

ここでは、デザイン費を検討する前に押さえておくべき前提条件を整理します。

(1)オフィスの目的と役割を明確にする

デザイン費の考え方は、オフィスが担う目的によって大きく変わります。採用や来客対応を重視するオフィスと、業務効率や集中環境を優先するオフィスでは、投資すべきポイントが異なります。

目的が曖昧なまま進めると、「なんとなく良さそう」という理由でデザインが決まり、費用と効果の関係が見えなくなりがちです。まずは、そのオフィスが何のために存在するのかを言語化することが重要になります。

(2)利用期間と契約条件を把握する

デザイン費は、オフィスをどれくらいの期間使う想定なのかによって、妥当性が大きく変わります。短期利用にもかかわらず、長期前提の内装投資を行うと、回収できないコストが残ることになります。

賃貸借契約の期間や更新条件、原状回復の範囲を把握したうえで、どこまで投資してよいのかの上限を整理しておくことが、実務上の重要な判断材料になります。

(3)誰が、どのように使うオフィスなのかを整理する

デザイン費を考えるうえで見落とされがちなのが、「誰が主にその空間を使うのか」という視点です。経営層、社員、来客、採用候補者など、利用者によって重視すべきポイントは異なります。

主な利用者が誰なのかを整理しないまま進めると、評価する人と使う人がずれるデザインになりやすくなります。デザイン費は、利用者の行動と接点が多い部分ほど効果が出やすいという前提を押さえておく必要があります。
 

3. デザイン費をかけるべきポイント

デザイン費を検討する際に重要なのは、「目立つ場所にお金をかける」ことではなく、投資した効果が評価として返ってきやすい場所を見極めることです。限られた予算の中では、すべての空間に均等に費用をかけることは現実的ではありません。

実務上は、企業の印象形成や日常的な満足度に直結するポイントに、意識的にデザイン費を配分することが、結果として納得感の高いオフィスにつながります。

(1)来客・採用に直結するエリア

来客や採用候補者が実際に目にするエリアは、オフィス全体の評価を左右しやすいポイントです。ここで受けた印象は、その後に見る執務エリアの印象にも影響を与えるため、費用対効果が比較的分かりやすい投資領域と言えます。

過度に装飾する必要はありませんが、企業としての姿勢や価値観が伝わるレベルの整え方は必要になります。第一印象が曖昧だと、オフィス全体の評価もぼやけてしまいます。

<デザイン費をかけるべき代表的なエリア>

  • エントランス
  • 受付・待合スペース
  • 応接・会議室(来客利用が多いもの)

これらのエリアは、利用頻度以上に「見られる頻度」が高い点が特徴です。そのため、少しのデザイン差が大きな印象差として表れやすくなります。

(2)日常的に使われ、満足度に影響する空間

来客対応だけでなく、社員が日常的に使う空間も、デザイン費をかける価値があるポイントです。毎日使う空間ほど、小さな不満や違和感が積み重なりやすく、長期的な満足度に影響します。

ここでは、派手な装飾よりも、使い心地や快適性に関わる要素への投資が効果的です。

日常利用空間で投資効果が出やすい要素

要素

理由

照明

作業効率・疲労感に影響

素材感

安っぽさ・快適性に影響

音環境

集中力・ストレスに影響

これらは完成時には目立ちにくいものの、使い続けることで評価差が広がる要素です。日常業務の質に直結する部分だからこそ、最低限の水準ではなく、一定の質を確保する投資が有効になります。

デザイン費をかけるべきポイントに共通しているのは、「使われる」「見られる」「評価される」という接点が明確なことです。ここを押さえて配分することで、限られた予算でも効果を感じやすいオフィスづくりが可能になります。
 

4. デザイン費を削るべきポイント

デザイン費は、かけるべきところに集中させるからこそ効果が出ます。そのためには同時に、投資対効果が出にくいポイントを見極め、意図的に削る判断も欠かせません。削るべきポイントを整理せずに進めると、結果として本来かけるべき部分に十分な予算を回せなくなります。

ここでは、実務上「抑えても問題が起きにくい」代表的なポイントを整理します。

(1)利用頻度が低い、または限定的な空間

大型オフィスや多機能オフィスでは、すべての空間が均等に使われるわけではありません。利用頻度が低いスペースに過度なデザイン費をかけても、評価される機会は限られます。

「将来使うかもしれない」「一応用意しておきたい」といった理由で作られた空間ほど、実際にはほとんど使われないケースが多くなります。こうした空間は、最低限の機能と清潔感を確保する程度に抑える判断が合理的です。

(2)流行や装飾性に強く依存するデザイン

トレンドを強く反映したデザインは、完成時には魅力的に見える反面、時間の経過とともに陳腐化しやすいというリスクがあります。特に、色や形に特徴が強い装飾は、数年後に違和感が出やすくなります。

オフィスは長期間使われる前提の空間であるため、流行を前提にした投資は回収しにくいという視点が重要です。デザインで表現する場合は、可変性の高い家具や什器で対応する方が、コスト面でも柔軟性があります。

(3)機能で代替できる要素は作り込みすぎない

本来、デザインで表現しなくても、運用や備品で代替できる要素は少なくありません。たとえば、造作棚や固定什器を多用すると、初期費用だけでなく、将来の変更コストも高くなります。

デザイン費を抑えるべきポイントの一つは、後から変更しにくい固定的な作り込みです。機能が満たせるのであれば、家具やレイアウトで柔軟に対応できる余地を残すことで、結果としてコストパフォーマンスの高い設計になります。
 

5. デザイン費を削りすぎて失敗するケース

デザイン費は抑えるべきポイントを見極めることが重要ですが、削減を優先しすぎると、別の形でコストや不満が発生するケースがあります。特に、削ってはいけない領域まで削ってしまうことが、失敗の原因になりやすくなります。

ここでは、実務でよく見られる代表的な失敗パターンを整理します。

(1)安っぽさが企業評価に影響する

デザイン費を過度に削った結果、空間全体が簡素すぎる印象になってしまうと、来客や採用候補者に与える評価に影響が出ることがあります。特にエントランスや応接エリアは、企業の姿勢が最初に伝わる場所であり、最低限の質が求められます。

「機能は満たしているから問題ない」と判断しても、見た目の印象は無意識に評価されるため、後から違和感として残ることがあります。企業イメージとのギャップが生じると、結果的に評価を下げてしまうリスクがあります。

(2)入居後に追加コストが発生する

初期のデザイン費を抑えすぎた結果、入居後に「やはり使いにくい」「想定と違う」と感じ、追加工事や備品の買い替えが発生するケースも少なくありません。こうした後追いの対応は、計画段階よりも割高になりがちです。

また、業務が始まってからの工事は、業務への影響や調整コストも発生します。結果として、最初に適切な投資をしておいた方が、総コストは低かったというケースも多く見られます。

(3)社員の不満が蓄積し、運用でカバーできなくなる

照明や音環境、動線といった日常的に影響する要素を削りすぎると、社員のストレスが蓄積していきます。小さな不満は表に出にくいものの、長期的には生産性や満足度に影響します。

運用ルールでカバーしようとしても、空間そのものに無理がある場合、限界があります。デザイン費を削った結果、運用負荷が増えるという本末転倒な状態にならないよう注意が必要です。
 

6. 不動産・コスト視点でのデザイン費の考え方

デザイン費は、内装の見た目を整えるための費用ではなく、不動産コストの一部として管理すべき投資です。特に賃貸オフィスでは、契約条件や利用期間と切り離して考えると、判断を誤りやすくなります。

ここでは、不動産・コストの視点から、デザイン費をどう位置付けるべきかを整理します。

(1)投資回収期間を前提にデザイン費を判断する

デザイン費を検討する際には、「いくらかけるか」よりも、「どの期間で使い切る想定なのか」を明確にする必要があります。賃貸オフィスでは、契約期間がそのまま投資回収期間の上限になります。

利用期間に対して過剰なデザイン投資を行うと、途中解約や移転時に回収できないコストが残ります。そのため、デザイン費は契約期間とセットで考えるべき費用であり、長期利用か短期利用かによって許容水準は大きく変わります。

(2)賃料・面積とのバランスで考える

デザイン費は単体で見るのではなく、賃料や面積と合わせて全体コストとして整理することが重要です。特に大型オフィスでは、内装費の判断がその後の固定費負担に影響します。

ここで、不動産コスト全体の中でのデザイン費の考え方を整理します。

不動産コスト全体で見たデザイン費の位置付け

項目

特徴

判断の視点

賃料

毎月発生する固定費

面積・稼働率との整合

デザイン費

初期投資

利用期間で按分

原状回復費

退去時コスト

設計段階で抑制可能

このように整理すると、デザイン費だけを削減するのではなく、トータルコストをどう最適化するかという視点で判断できるようになります。

(3)原状回復を見据えた設計がコストを左右する

デザイン費を考える際に見落とされがちなのが、退去時の原状回復コストです。造作を多用したデザインや、スケルトン前提の作り込みは、退去時に大きな負担になることがあります。

最初から原状回復しやすい設計にしておくことで、将来のコストを抑えることができます。「作るとき」だけでなく「戻すとき」まで含めて考えることが、不動産戦略としてのデザイン費判断には欠かせません。

7. デザイン費配分が上手い企業の共通点

デザイン費の使い方が上手い企業に共通しているのは、デザインを「見た目を良くするための費用」として扱っていない点です。単なる装飾や流行への対応ではなく、経営判断の一部としてデザイン費を位置付けていることが特徴です。

こうした企業では、デザインに対する期待値が過度に膨らむこともなく、「どの場面で、誰に、どのような効果をもたらしたいのか」が整理された状態で意思決定が行われています。そのため、費用対効果の説明がしやすく、社内合意も取りやすくなっています。

ここでは、デザイン費配分が上手い企業に共通する考え方を整理します。

<デザイン費配分が上手い企業の考え方>

  • 目的と効果をセットで考えている

  • 全体を均等に扱わない

  • 使われ方を前提に判断している

  • 将来の変更を想定している

これらの企業では、「ここにいくらかけるか」よりも、「なぜここにかけるのか」が明確です。たとえば、来客や採用に影響するエリアには一定の投資を行う一方で、利用頻度が低い空間や代替可能な要素は意図的に抑えています。すべてを同じ基準で評価しない姿勢が、無駄なコストを防いでいます。

また、完成時点の見栄えだけで判断せず、実際に使われる場面を具体的に想定している点も共通しています。社員が日常的に使う空間では、派手さよりも快適性や継続的な使いやすさが重視されており、結果として満足度の高い環境が維持されています。

さらに、将来の組織変更や働き方の変化を前提にしている点も重要です。固定的な作り込みに偏らず、後から調整できる余地を残すことで、長期的に見たコスト増加や作り直しを防いでいます。デザイン費を「一度きりの支出」としてではなく、時間軸で捉えていることが、配分の上手さにつながっています。

デザイン費配分が上手い企業に共通するのは、特別なセンスではありません。判断の軸が整理されており、説明できる理由を持って投資しているという点が、結果として満足度の高いオフィスを生み出しています。
 

8. まとめ

デザイン費は、単に「かけるべきか、削るべきか」で判断するものではありません。重要なのは、どこに配分すれば効果が出て、どこで抑えても問題が起きにくいかを整理することです。

来客や採用、社員の満足度に直結する空間は、少ない差が大きな評価差につながりやすく、一定のデザイン投資が合理的です。一方で、利用頻度が低い空間や流行に依存する装飾、機能で代替できる要素は、意図的に削ることで全体のバランスを取りやすくなります。

また、デザイン費を削りすぎると、企業イメージの低下や入居後の追加コスト、運用負荷の増大といった別の問題が発生します。削減そのものを目的化しないことが重要です。

不動産・コスト視点では、デザイン費は初期投資として、契約期間や利用年数、原状回復まで含めて判断すべき費用です。賃料や面積と合わせて全体コストとして整理することで、納得感のある投資判断が可能になります。

デザイン費の使い方が上手い企業は、見た目の良さではなく、使われ方と投資効果の関係を説明できる判断を積み重ねています。その視点を持つことが、失敗しないオフィスづくりにつながるでしょう。

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