【内覧】オフィスビルのグレード基準|企業価値を高めるビル選定の視点
1. オフィスビルのグレードとは何か
企業がオフィスを選ぶ際、「ビルグレード」という言葉を耳にする機会は多くあります。
しかし、一般的なイメージとは裏腹に、ビルグレードには明確な統一基準が存在しません。日本では公的機関が定めた基準はなく、市場評価・不動産会社の分類・設備スペックなどを総合して判断されることが一般的です。そのため、自社に最適なオフィスを選定する際には、ビルグレードの構成要素を正しく理解し、自社の用途・働き方・ブランド戦略に合致するかどうかを見極める必要があります。
近年は働き方の変化や採用競争の激化を背景に、オフィスビルの質が企業価値に与える影響が大きくなりつつあります。特に立地・環境性能・耐震性・デザイン性は、企業ブランディングを支える重要な要素として再評価されており、グレード選びは単なる「建物選び」を超えた経営判断として扱われています。
本記事では、これらのグレード基準を体系的に整理し、企業がどのように評価・選定すべきかをわかりやすく解説していきます。
2. グレード分類に用いられる主な基準

オフィスビルのグレードは、単に「新しい」「見た目が良い」といった印象だけで判断されるものではありません。実際には、立地・建物性能・設備仕様・管理品質など、多面的な要素を総合的に評価することで決まる概念です。
企業がオフィスを選定する際には、これらの基準を体系的に理解しておくことで、将来の運用・働き方・企業価値にどの程度影響するかをより正確に判断できるようになります。
また、グレードの違いは、入居後の満足度や維持コストにも直結するため、検討段階で網羅的に把握することが極めて重要です。
- 立地(駅距離・エリアブランド・交通利便性)
- 建物スペック(構造・耐震性・天井高)
- 設備仕様(空調・電気容量・フロア設備)
- セキュリティレベル
- ビルメンテナンス・管理体制
- 共用部デザイン・外観グレード
- 延床面積・基準階面積
- 竣工年・リニューアル状況
これらの項目は、単体ではなく複合的に評価されます。たとえば立地は良くても耐震性が低い場合は全体としてのグレード評価が下がるなど、相互のバランスが重要になります。
また、外資系企業の多くは天井高や基準階面積を重視する傾向があり、国際基準で見た際の評価軸も理解しておく必要があります。
3. グレードA・B・Cの一般的な分類

市場ではオフィスビルの質をわかりやすく比較するために、「A・B・C」の3つのグレードに分類して整理する方法が一般的に用いられています。正式な公的基準ではないものの、不動産業界全体で広く浸透している評価軸であり、企業が物件を検討する際の判断材料として非常に有用です。
この分類は、立地・建物規模・設備スペック・築年数・管理体制といった項目の総合点によって決まるもので、それぞれのクラスには一定の特徴や傾向があります。特にAグレードは国内外の大企業が本社機能として利用するケースが多く、ビル自体がエリアのランドマークとなることも少なくありません。
一方で、BグレードやCグレードのビルは、必ずしも質が劣るというわけではなく、用途やコストバランス次第で非常に合理的な選択肢となります。
企業ごとのフェーズや働き方のスタイルによって「最適なグレード」は異なるため、各グレードの特徴を理解することが重要です。
▼ 各グレードの特徴
|
グレード |
主な特徴 |
|
Aグレード |
立地が主要ビジネスエリア、築浅、設備仕様が高水準、大規模ビル |
|
Bグレード |
立地・設備が平均的、築年数は中程度、中規模中心 |
|
Cグレード |
築年数が古く設備仕様も最低限、小規模ビルが多い |
Aグレードビルは、最新の設備仕様を備え、耐震性能やセキュリティレベルも高い水準にあることが特徴です。企業のブランド力を高めるだけでなく、従業員の働きやすさや安全性にも大きく寄与するため、本社や基幹拠点として選ばれる傾向が強くなっています。また、来客対応時の印象も良く、採用面で競争力を向上させる効果も期待できます。
Bグレードは、一定の立地と設備水準を備えながらもコストを抑えられるため、「品質と費用のバランスを重視する企業」に適しています。必要十分なスペックを持ちながら柔軟に活用できる点が評価され、多くの企業が選択肢として検討するカテゴリです。
Cグレードは築年数が古く設備も最低限であることが多いものの、立地条件が良いケースや自由度の高い運用ができる物件も存在します。スタートアップや小規模組織では、コストメリットを活かしてオフィスデザインへ投資したり、独自の働き方に合わせて空間をつくり込むなど、工夫次第で魅力的な環境を創出できる余地があります。
4. 設備・スペックによるグレード判断

ビルのグレードを判断するうえで、設備やスペックは極めて重要な要素です。これらは入居後の使い勝手やレイアウト自由度、さらには働く環境の快適性に直結するため、企業側は細かな数値や仕様を必ず確認する必要があります。
また、設備性能が高いビルほど長期的なメンテナンス負荷が低く、運用コストの最適化にもつながるため、グレード評価には欠かせない視点といえます。
(1)天井高・梁下高
天井高はオフィスの開放感を大きく左右し、社員が感じる快適性にも直結します。特にAグレードでは 2,700mm以上 が標準となることが多く、広々とした空間演出が可能です。
また、天井高が高いほど照明計画の柔軟性が高まり、デザイン性の高いオフィスを構築しやすくなる点も特徴です。梁下部分の高さもレイアウトの自由度に影響するため、動線設計や会議室配置などを考える際に重要な判断材料となります。
(2)耐震性能
耐震性能は、企業の 安全配慮義務とBCP(事業継続計画) に深く関係する要素です。新耐震基準(1981年以降)への適合は最低条件ですが、Aグレードでは制振構造や免震構造が採用されるケースも増えています。こうした高性能な耐震技術は、地震時の揺れを大幅に軽減し、オフィス内の被害や業務停止リスクを抑える効果があります。
また、災害時の建物安全性が確保されることで、出社が必要な業務の継続性も高まり、企業価値の維持につながります。
(3)電気容量・OAフロア
現代のオフィスではPC・モニター・サーバー・通信機器が増加しており、電気容量の確保は必須条件です。Aグレードビルでは大容量設備を標準で備えているため、増席や機器の増設にも柔軟に対応できます。
また、OAフロア(50〜100mm程度の高さ) が十分に確保されていることで、配線の整理やレイアウト変更のしやすさも向上します。特にIT企業やクリエイティブ職種では、こうした配線容量や床下スペースの自由度が業務効率に大きく影響するため、重要な評価ポイントとなります。
5. 立地・エリア評価の重要性

オフィスビルの立地は、社員の働きやすさだけでなく、企業活動全体の生産性に大きく影響します。アクセス性や周辺環境が整っている場所は、来訪者に与える印象も良く、企業の信頼性を高める役割も果たします。
さらに、立地は長期的な企業ブランドの形成にも関わるため、単なる利便性以上の戦略的要素として捉えることが重要です。
(1)交通利便性の評価
オフィスを選ぶ際に最も重視されるのが交通利便性です。特に毎日通勤する社員にとって、駅距離は日々のストレスに直結するため、企業としても配慮が求められます。
駅近のビルは賃料が高くなる傾向がありますが、遅刻・疲労の軽減や採用力向上といった副次効果も期待でき、総合的にはメリットが大きいケースが多く見られます。
▼ 駅距離の目安
|
駅からの距離 |
評価傾向 |
|
徒歩3分以内 |
Aグレードに多く、高評価 |
|
徒歩5分以内 |
Bグレード中心だが利便性は高い |
|
徒歩7分以上 |
コスト面のメリットが出やすい |
徒歩3分以内の物件は来訪者が迷いにくく、営業活動にもプラスになるため、中核拠点としての価値がさらに高まります。
(2)エリアブランドの重要性
オフィスエリアには、それぞれ固有のブランド価値が存在します。企業がどの街にオフィスを構えるかは、ステークホルダーに対するメッセージ性を帯びるため、イメージ戦略においても重要となります。
特に外国企業や求職者はエリアブランドを重視する傾向があり、立地選定は採用・営業・投資家対応のすべてに影響を与えます。
<主なエリアブランドの傾向>(例:東京都心)
- 丸の内・大手町:金融・大企業が多く、最も高いビルグレードを維持
- 渋谷:IT・スタートアップ集積、クリエイティブ向き
- 新宿:交通の要衝、幅広い業界が集まる
- 品川:新幹線アクセスにより外資系にも人気
エリアブランドは社員の満足度にも影響し、「誇れるオフィス」にしたいという企業文化を支える要素にもなります。
(3)周辺環境(利便施設)の充実度
周辺環境は、日々の働きやすさに直結するため、実は非常に重要な評価ポイントです。飲食店の選択肢が多いエリアは社員満足度が高まり、コンビニ・銀行などが近いビルは業務の効率も向上します。
さらに、ランチや休憩で利用できる公園や緑地がある場合、リフレッシュ環境の充実によって働き方改革にも貢献します。
<評価ポイント>
- 飲食店やカフェの数
- コンビニ・ドラッグストアなどの生活利便性
- 銀行・郵便局など業務関連施設
- 緑地・公園などの環境要素
周辺環境の充実度はオフィスの“出社価値”にも直結し、特にハイブリッドワーク時代には重要度がさらに高まっています。
(4)アクセスの多様性(路線数・乗換え利便性)
複数路線にアクセスできる立地は、社員の自宅がどこにあっても通いやすく、採用対象者の幅を広げる利点があります。路線トラブル時に代替経路が確保できる点も大きなメリットで、出社率が求められる業務にとって安定した機動力が確保されます。
さらに空港アクセスの良さは、国内外の移動が多い企業にとって戦略的価値が大きくなります。
<利便性が高いとされる条件>
- 複数路線に徒歩でアクセス可能
- 急行・快速停車駅
- 空港アクセスが良い(外資系企業で重視)
アクセスの多さは、企業の新規立地展開や営業エリア拡大にもプラスに働きます。
(5)立地による企業価値への影響
立地は企業そのものの印象を形成する重要な要素であり、商談や採用面接においても大きな影響力を持ちます。特にAグレードエリアにオフィスを構える企業は、信頼性やステータスを示すことができ、企業ブランドの強化にも直結します。
また、好立地のオフィスは社員のモチベーション向上につながり、生産性の向上を後押しすることが多く見られます。
<企業にもたらす主な効果>
- 採用応募数の増加
- 来訪者の印象向上
- 営業活動の効率化
- 災害時のアクセス確保
- 中長期的な企業イメージ構築
長期的には、立地の良さが企業の“選ばれる理由”となり、競争優位性の維持にも関わってきます。
6. ビル管理・メンテナンス品質による評価差

オフィスビルの価値は、建物のハードスペックだけでなく、実際にどのように管理・運用されているかによって大きく左右されます。管理品質が高いビルほどトラブルが少なく、企業が安心して業務を継続できる環境が整っているため、グレード評価の重要な判断基準となります。
本章では、管理品質の優劣がどのように企業の利用価値に影響するかを整理します。
(1)清掃品質の高さがもたらす快適性
清掃品質が高いビルは、日常的に衛生的で心地よい環境が維持されます。共用部が常に整備されていることで来訪者の印象も良くなり、企業のイメージ向上にもつながります。
また、清潔な環境は社員のストレス軽減に寄与し、生産性向上にも効果をもたらします。定期清掃だけでなく、細かな巡回清掃が行き届いているかがビル品質の差につながります。
(2)設備点検とメンテナンス体制の充実度
設備点検が適切に行われているビルは、空調・電気設備の故障が起きにくく、日常業務に対する支障が最小限に抑えられます。設備トラブルが少ないほど、企業は安定的に業務を運営できるため、信頼性の高いオフィス環境として評価が上がります。
特にAグレードビルでは、専門スタッフによる計画的なメンテナンスが実施されており、長期的な安心感が確保されます。
(3)防災管理と緊急対応力の違い
防災計画が整備されているビルは、災害発生時の被害を最小化するための体制が確立されています。避難経路・非常放送・消防設備などの整備状況が整っているほど、企業のBCP(事業継続計画)にも大きく貢献します。
また、緊急時に迅速に対応できる管理会社は評価が高く、日常的な安心感につながります。防災訓練が定期的に行われているかも重要な判断材料です。
(4)修繕計画と長期運用の安定性
優れたビル管理では、短期的な修繕だけでなく、長期視点の修繕計画が立てられています。長期修繕計画があるビルは、建物の劣化を予防し、資産価値を維持し続けることができます。これにより、入居企業は最新状態に近い設備環境を継続的に利用できるメリットがあります。
計画性の低いビルでは突発的な工事が増え、利用者の業務に影響が出やすい点が大きな違いです。
(5)ビルスタッフの対応品質
ビルスタッフの対応品質は、日々の快適性を左右する重要な要素です。丁寧な対応ができる管理スタッフが常駐しているビルは、入居者の細かな要望にも柔軟に応えてくれます。
トラブル発生時の迅速な対応力が高いほど安心感が高まり、企業側のストレスも減少します。ビルの“顔”としてのスタッフの存在は、管理品質を象徴するポイントといえます。
7. グレードにより企業にもたらす効果の違い

オフィスビルのグレードは、企業の働き方やブランド価値に直接影響を与える重要な要素です。特にAグレードとB・Cグレードでは得られるメリットが異なり、企業の成長戦略や組織文化によって適切な選択が変わります。
ここでは、グレードによって企業にもたらされる代表的な効果を整理します。
(1)Aグレードの効果
- 採用強化・イメージ向上
- 災害時のBCP向上
- 最新設備による生産性向上
- 来訪者へのブランド訴求効果
Aグレードビルは高い立地価値と設備性能を有しているため、企業の信頼性や競争力を象徴する存在となります。特に採用活動では、優秀な人材が企業を選ぶ際の“魅力要因”として働くケースが多く、企業ブランディングの中核としても機能します。
さらに、質の高い環境は社員のモチベーションを向上させ、長期的な定着率にも良い影響をもたらす点が大きな強みです。
(2)B・Cグレードの効果
- コスト削減による経営効率向上
- 柔軟な拡張しやすさ
- 独自改装によるオリジナリティの実現
B・Cグレードは賃料が抑えられるため、限られた経営資源をコア事業へ振り分けたい企業にとって大きなメリットとなります。特にスタートアップや中小企業では、コスト最適化と自由度の高さが成長スピードを左右するため、戦略的に選ばれるケースが増えています。
また、内装を自由に作り込めるビルも多く、自社カルチャーを反映した独自のオフィスづくりを実現できる点も魅力です。
8. まとめ

オフィスビルのグレードは、立地、設備、管理体制など複数の要素から総合的に評価されるものであり、どれか一つの指標で決まるわけではありません。大切なのは、自社が何を重視し、どのような働き方を実現したいかという視点から最適なグレードを選ぶことです。
Aグレードは高品質な環境で強力なブランド価値を生み出しますが、B・Cグレードはコスト効率や柔軟な運用を重視する企業にとって大きなメリットがあります。
ビルのグレード選びは、単なる場所選びではなく、企業戦略を支える重要な経営判断です。自社の未来像に最も合致する環境を見極めることが、長期的な企業価値向上につながります。
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