【リスク】BCP(事業継続計画)に強いオフィスの条件|企業活動を守るオフィスの条件とリスクマネジメント戦略

1. 事業継続を左右するオフィス選定の重要性

企業経営において、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)は必須の経営テーマとなっています。

地震・台風・水害・停電・パンデミックなど、多様なリスクが顕在化する中で、「どこで、どのような環境で事業を運営するか」というオフィス選定は、単なる不動産戦略ではなく事業継続戦略としての役割を担っています。特にオフィスビルは、従業員の安全確保、情報システムの維持、業務の早期復旧といった要素に直接影響し、BCPの成否を大きく左右します。

しかし、BCPの観点からオフィスを選定する企業はまだ多くはなく、賃料や立地、使い勝手といった短期的な観点が優先されがちです。実際には、災害時に事業が停止することで生じる損失は、賃料の節約分を大きく上回るケースも多く見られます。

本記事では、BCPの観点から企業がオフィスに求めるべき条件を体系的に整理し、安全・強靭な事業運営を支えるための基準を解説します。
 

2. BCPに強いオフィスが求められる背景

BCPに強いオフィスの必要性は、自然災害の増加だけでなく、企業の事業構造の変化によって高まっています。

ここでは、背景となる要因を整理します。

(1)自然災害リスクの増加

日本は世界でも有数の地震多発国であり、台風・豪雨などの気象災害も増加しています。これに伴い、ビルの耐震性やライフラインの維持能力は企業にとって重大な関心事となっています。

特にオフィス立地によって浸水リスクや帰宅困難リスクが異なるため、ビルの性能と周辺環境の総合評価が必要です。

(2)企業活動のIT依存度の上昇

クラウドやオンライン会議などの利用が進み、業務におけるIT依存度は過去にないほど高まっています。停電やネットワーク障害が発生すると事業全体が停止するため、電源・通信の冗長性を確保できるオフィスは事業継続において不可欠な存在となっています。

(3)人的資本の保護と安全確保

人的資本経営の流れを受け、従業員の安全確保は企業価値に直結する扱いとなりました。災害時の安全性が低いオフィスでは、社員のリスクが増すだけでなく、企業の社会的評価にも影響します。

この点でBCP対応が充実したオフィスの重要性は一層高まっています。
 

3. 耐震性能がBCPに与える影響

耐震性能は、BCP対応の中核をなす要素です。

耐震構造のレベルによって災害時の被害状況や事業復旧のスピードが大きく変わります。

(1)新耐震基準・制震・免震の違い

オフィスビルの耐震性は一般的に以下の3種類に分類されます。

  • 新耐震(耐震構造):大地震でも倒壊しない強度を確保

  • 制震構造:揺れを吸収する装置を設置し、建物内部の被害を軽減

  • 免震構造:建物自体を地盤から絶縁し揺れを大幅に低減

BCPの観点では、倒壊しないことに加え建物内部の機能がどれだけ維持できるかが重要です。制震・免震は事業復旧速度に優れており、データセンターや金融企業が選ぶ理由にもなっています。

(2)ビルの築年数と耐震改修

築年数の古いビルでは耐震性能が不十分なケースがあり、耐震改修が行われているかどうかが重要な判断材料になります。

特に1971年以前の旧耐震の物件は、BCPを前提とした運用には不向きであり、企業によっては選定段階で除外されることもあります。
 

4. 立地・周辺環境が事業継続に与える影響

BCPはビル性能だけでなく、オフィスが立地するエリアの特性にも左右されます。

(1)地震・津波・浸水リスク

自治体や国土交通省が提供するリスクマップは、立地選定における重要な指標となります。浸水想定区域や海抜の高さによってオフィス復旧スピードが大きく変わるため、企業はエリア全体の安全性を評価する必要があります。

(2)帰宅困難者対応と交通アクセス

災害時に交通機関が止まることを前提とし、徒歩帰宅が想定されるエリアかどうかも重要です。主要駅から距離があるオフィスは、災害時の移動危険性が高まるため、BCP観点では不利となる場合があります。

(3)エリアごとの差異

東京であれば、丸の内・大手町・渋谷・新宿・品川などの主要オフィスエリアでも地盤や災害リスクが異なります。企業は、立地選定に際してビルスペックだけでなく、地域特性そのものをBCPの一部として評価する必要があります。
 

5. ライフライン・インフラの強度がBCPを左右する

ライフラインは事業継続に直結する最重要インフラであり、災害時の復旧速度はオフィスの性能によって大きく変わります。特に電力・通信・空調といった基幹機能は一度停止すると企業活動全体に影響し、復旧までの時間が長いほど事業損失が拡大します。

そのため、BCPを重視する企業ほど「建物がどれだけ自律的に稼働し続けられるか」を重要な選定基準としており、ビルの設備レベルは企業の信頼性を支える要素になります。

(1)電源の冗長性(非常用電源・自家発電)

停電時に業務を継続できるかどうかは、非常用電源の性能に大きく左右されます。特に金融系や情報系の企業では重要業務が多く、電源断が許されないため、発電容量や稼働時間の長さが重要な判断材料になります。

複数の電源ルートを確保できるビルは、単一障害での停電リスクを大幅に軽減でき、BCP評価において高い優位性を持ちます。

  • 非常用発電(72時間対応など)
  • UPS(無停電電源装置)
  • 受電設備の二重化

これらのインフラが整備されている物件は、重大災害時でも業務継続が可能であり、企業の信頼性向上にもつながります。

(2)通信インフラの多重化

テレワークが一般化し、クラウド利用が進む現代では、通信障害が発生すると事業全体が停止するリスクがあります。そのため、通信インフラがどれだけ多重化され、障害時にバックアップ機能として機能するかが重要です。

特に複数キャリアの引き込みやネットワーク冗長構成があるビルは、クラウド業務の依存度が高い企業にとって安心材料となります。

  • ISPの二重化
  • 基幹ルーターの冗長構成
  • ビル内のバックアップ回線

通信が途切れないことは、災害時だけでなく日常業務の安定性にも寄与し、企業の事業基盤の強さを裏付ける要素となります。
 

6. 災害時のビルオペレーション体制の重要性

BCPに強いオフィスを判断する際、建物のスペックと同じく重要なのが「災害時にビルがどのように運営されるか」というオペレーション体制です。どれだけ高性能な設備を備えていても、実際の災害時に適切な判断と迅速な対応が行われなければ、事業継続能力は大きく損なわれます。

特に近年は予測不能な災害が増えており、平時の訓練や情報共有が十分でないビルでは、テナント全体のリスクが高まる傾向があります。

(1)24時間管理体制と緊急対応手順

優れたビルは、災害発生時に備えて明確な対応フローを整備し、管理会社・警備会社・ビルオーナー間での役割分担が確立されています。安否確認や共用部の安全点検が速やかに行われることで、テナントは必要最低限の混乱で事業再開に向けた判断ができます。

また、災害時の指示系統がわかりやすく整理されているビルは、テナントからの信頼も高く、BCP強度の高さが評価されます。

以下の確認が迅速に実施されることで、事業継続につながります。

  • 安否確認
  • エレベーター停止時の対応
  • 受電設備の点検
  • 共用部の安全確認

(2)備蓄・サポート体制

災害時には、帰宅困難者の発生や交通網の寸断を前提にした対応が求められます。十分な食料・水・毛布などの備蓄のほか、簡易ベッドや非常用トイレを備えたビルは、テナント企業の安全確保に大きく貢献します。

これらの備蓄体制は単なる物資の確保だけでなく、ビル管理側が「テナントの事業と生命を守る」意識を持っているかを測る指標ともなり、結果として企業のBCPを強化する重要な要素となります。
 

7. BCPを強化するオフィス運用の実務ポイント

BCPに強いオフィスを実現するには、建物性能だけでなく、企業自身の運用体制が整っているかどうかが重要です。日常的な管理の質が高い企業ほど、災害時に混乱が少なく、復旧に向けた判断も迅速になります。

そのため、オフィス関連のルールや配置計画を“BCPの視点”で最適化しておくことが求められます。

(1)レイアウトとBCPの整合性

オフィスレイアウトがBCP計画と一致していない場合、災害発生時に想定どおりの行動が取れず、復旧作業や重要データへのアクセスが遅れるリスクがあります。特にサーバールームや災害対策本部として利用する会議室は、建物内で比較的安全性が高い場所に配置する必要があります。

こうした配置判断は、普段の業務効率だけでなく「復旧のしやすさ」まで踏まえて最適化することが重要です。

(2)テレワークとのハイブリッドBCP

特定の場所に依存しない働き方を整備しておくことは、事業継続力を高める有効な手段です。テレワーク環境が整っていれば、災害時にオフィスが使えなくなっても、業務を大幅に停滞させることなく継続できます。

また、クラウドツールやオンライン会議の活用は、物理的な拠点への依存度を下げ、企業全体のレジリエンス向上につながります。
 

8. まとめ

BCPに強いオフィスとは、単に頑丈なビルに入居することではなく、企業が事業を止めずに継続するための総合的な仕組みです。耐震性能、インフラ、立地、運用体制、そして企業自身の準備が一体となって初めて機能します。

事業停止による損失は、賃料や設備投資の差額をはるかに超えることもあり、BCP視点でのオフィス選定は“コスト”ではなく企業価値を守るための投資と捉えるべきです。

今後、災害リスクが増える中で、BCPに強いオフィスの重要性はさらに高まります。企業は建物の性能だけでなく、組織としての事業継続力を高めるため、総合的な視点でオフィス戦略を構築する必要があります。

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