【設計】フロア分割・集約の判断基準|事業拡大・縮小に対応する空間戦略
1. フロア分割・集約が経営に与える影響とは
企業が成長フェーズを進む中で、オフィスの面積やレイアウトは常に変化を求められます。事業拡大で席数が増える場合はフロア追加やレイアウト変更が必要になり、逆に組織再編や働き方の変化によって利用面積を縮小するケースもあります。
このとき重要になるのが「フロア分割」と「フロア集約」の判断です。どちらを選ぶかによって、コミュニケーション効率、生産性、ランニングコストが大きく変わるため、単なるスペース調整ではなく、経営判断として位置づける必要があります。
2. フロア分割のメリット、デメリット

フロア分割は、増員や事業拡大などで面積拡張が必要なときに発生しやすい選択肢です。
一方で、組織運営に影響を及ぼす課題もあるため、慎重な検討が求められます。
(1)フロア分割のメリット
<メリット一覧>
- 短期間で席数・会議室を確保できるため、急な増員にも対応しやすい
- 部門ごとに専用フロアを設けることで、集中環境を保ちやすくなる
- 既存レイアウトを大きく変えずに増床できるため、業務への影響が少ない
- プロジェクト単位でフロアを分けるなど、用途に応じた機能配置が可能になる
フロアを増やすことで、物理的なスペース不足を最小限の工事で解消でき、日常業務を止めずに増員へ対応できます。
また、部門やチーム単位でエリアを分けやすくなるため、仕事の特性に合わせた環境づくりがしやすくなる点も大きなメリットです。事業が急拡大している企業ほど、この柔軟性は重要な意味を持ちます。
(2)フロア分割のデメリット
<デメリット一覧>
- 物理的距離が生じることで、部門間の情報伝達が遅れやすい
- 偶発的な会話が減少し、部門の分断や孤立が発生する場合がある
- 管理部門の移動負荷が増し、業務効率が低下することがある
- フロアごとに設備・備品が必要となり、運用コストが増加しやすい
フロアが分かれると、社員同士が自然に顔を合わせる機会が減り、組織の一体感が損なわれる恐れがあります。特に、プロジェクト型の組織や意思決定スピードが重視される企業では、この影響が大きく現れます。
また、管理業務や総務対応も複雑化し、設備・什器の重複投資が発生するなど、長期的なコスト上昇につながる点も見逃せません。結果として、運用面の負担が増え、経営効率にも影響が及ぶ可能性があります。
3. フロア集約のメリット、デメリット

フロア集約は、働き方の変化・コスト削減・コミュニケーション活性化を目的に選択されるケースが増えています。
しかし、集約はメリットだけでなく、慎重な計画が必要なデメリットも伴います。
(1)フロア集約のメリット
<メリット一覧>
- 偶発的な接点が増え、部門間コラボレーションが発生しやすくなる
- 情報伝達のスピードが向上し、意思決定が早くなる
- 会議室・設備の運用が一元化され、管理負担が減少する
- 社内文化が共有されやすくなり、組織の一体感が高まる
フロアがひとつにまとまると、物理的な距離が縮まり、社員同士のコミュニケーションが自然と増えます。これにより、ちょっとした相談や情報共有がスムーズになり、結果的に意思決定のスピードが向上します。
また、会議室や複合機などの設備を共用できるため、管理効率が高まり、運用コストの抑制にもつながります。集約は、組織文化の醸成にも効果的で、チームとしての一体感を強化したい企業に向いています。
(2)フロア集約のデメリット
<デメリット一覧>
- フロアあたりの人口密度が上がり、集中しにくい環境になるリスクがある
- 必要な席数・会議室数の調整が難しく、レイアウト変更が複雑化しやすい
- 騒音や動線の混雑など、副次的なストレスが発生する可能性がある
- 短期的には工事費・移動費が発生し、業務負荷が一時的に増大する
集約は効果が大きい一方、一つのフロアで多人数を収容する必要があり、レイアウトの最適化が難航するケースがあります。集中スペースとコラボスペースのバランスを誤ると、騒音や混雑が発生し、業務効率が下がる恐れもあります。
さらに、集約には配置転換や什器移動が伴うため、短期的な導入コストや現場負担が増える点も考慮する必要があります。適切な設計と運用ルールがないと、期待していた効果を得られない可能性があります。
4. 業種と働き方によって最適解は変わる

フロア分割・集約の結論は、企業の業種特性や働き方によって大きく異なります。どちらが正解かは一概に決められるものではなく、組織がどのように価値を生み出しているか、どのようにコミュニケーションを必要としているかによって最適解が変動します。
したがって、企業は「広さ」や「賃料」だけで判断するのではなく、“業務プロセスとフロア構成の相性” を重視した総合的な検討が不可欠です。
(1)プロジェクト型・クリエイティブ型は“集約”が機能しやすい
これらの業種では、密なコミュニケーションとスピーディな意思決定が成果に直結します。フロアを集約することで、偶発的な交流やクイックな打ち合わせが生まれやすく、プロジェクトの進行速度が大きく向上します。
また、クリエイティブ業務では、アイデア共有やレビューが頻繁に発生するため、ワンフロアに集約したほうがチーム全体のアウトプット品質を高められます。社員が「いつでも相談できる」環境は、クリエイティブ職にとって特に価値が高く、組織文化の醸成にも効果を発揮します。
(2)専門職中心・コールセンター型は“分割”の方が効率的な場合も
専門職やコールセンターなど、集中力が求められる業務では、静音環境の確保が最優先となります。そのため、フロアを分割することで騒音を抑え、作業効率を最大化できる環境をつくりやすいというメリットがあります。
また、情報管理の厳格化が必要な業務では、フロア分割によるセキュリティレベルの差別化が可能になり、「業務特性に合ったゾーニング」が実現しやすい点も大きな利点です。結果として、誤情報閲覧やオペレーションミスなどのリスクも軽減できます。
5. 集約・分割の判断に影響する「コスト構造」

フロア構成の変更は、単なるレイアウト調整ではなく、企業の固定費や運用効率に大きく影響します。
特に複数フロアを運用する場合と、集約して管理を一本化する場合では、コストの構造が大きく異なるため、慎重な検討が必要です。
企業は「直近の賃料」だけではなく、光熱費・管理費・設備更新費といった総コストを中長期で把握する視点を持つことが求められます。
(1)フロアが増えるほど管理コストが増加する
複数フロア運用では、セキュリティゲート、清掃、設備点検など、フロア単位で必要となる管理作業が増えます。そのため、たとえ面積が同じであっても、フロア数が多いほど運用コストは膨らみやすくなります。
さらに、空調や電灯の稼働もフロア単位で発生するため、稼働率が低い時間帯でも固定的にコストがかかる構造になりがちです。これにより、「増員対応はできても、じわじわとランニング費用が増える」状態につながることが多くあります。
(2)集約によるコスト削減効果は大きい
フロア集約を行うと、空調やセキュリティ機器などの設備が一本化され、管理の重複が減るため、運用コストが大幅に削減されます。また、複合機・会議室・什器などの共用化が進み、設備投資を抑えられる点も大きなメリットです。
さらに、使用率が低いスペースを削減できるため、長期的には賃料総額の削減にもつながります。こうした効果を積み上げると、フロア集約は“最も効果の高いコスト最適化施策”の一つといえます。
(3)フロア変更に伴う“短期コスト”も見逃せない
集約も分割も、実施時には一定の初期費用が発生します。レイアウト工事、什器移動、配線工事、追加什器の調達など、多様なコストが発生するため、短期的には経費増となるケースがあります。
しかし、これらの初期投資が適切に設計された場合、運用効率の改善や生産性向上で投資回収が可能になることも多く、“短期コストと長期コストのバランスを見極める”ことが経営判断として重要になります。
6. フロア構成を見直すタイミングで考えるべき要素

フロア分割・集約の判断は、単なる席数調整ではなく、企業の成長戦略・組織構造・働き方の変化を総合的に捉える必要があります。
見直しのタイミングを誤ると、過剰スペースやコミュニケーション低下などが起き、コストと生産性の両面で非効率を生む可能性があります。
以下では、判断に不可欠な主要要素を体系的に整理します。
(1)増員計画と席数の将来予測
組織が拡大フェーズにある場合、現在の席数だけを基準にするとすぐに逼迫し、再度レイアウト工事が必要になることがあります。そのため、中長期の増員計画と席需要を見越し、余裕を持ったスペース設計が重要です。
特にハイブリッドワークが進む企業では、出社率と席稼働率の関係性を定量的に把握することで、“広すぎず、狭すぎず”の最適な席数を算出できます。
▼席数計画の検討ポイント
|
検討項目 |
内容 |
重要度 |
|
出社率 |
週あたりの平均出社率を把握 |
高い |
|
席稼働率 |
ピーク時の利用状況を測定 |
高い |
|
人員増減見込み |
半年〜3年以内の増員計画 |
中 |
|
チーム別の利用特性 |
出社頻度の違いを考慮 |
中 |
将来予測に基づく席計画は、フロア構成の誤りを防ぐ基礎となります。
(2)会議室・打ち合わせスペースの需要見込み
働き方の変化により、会議の形式も大きく変化しています。オンライン会議の増加により、小規模会議室や個室ブースが必要となり、反対に大人数会議室の稼働率は低下している企業も多く見られます。
会議室の需給が現状と合っていないと、会議室不足による業務停滞や、使われない大部屋が“固定費のムダ” を生むため、フロア見直し時の重要ポイントとなります。
<会議室需要を判断するためのチェック項目>
- 小会議室(1〜4名)の利用率は高いか?
- オンライン会議用の個室ブースは足りているか?
- 大人数会議室は稼働率が30%未満ではないか?
- 会議室の予約が取りづらい時間帯はあるか?
これらを把握することで、最適な会議室構成が見えてきます。
(3)動線とワークスタイルの相性を確認する
フロアレイアウトを変更する際は、社員がどのように動くか、部署間の距離感が業務にどのように影響しているかを可視化することが重要です。動線が長いと、コミュニケーションが減り、生産性が下がる原因になります。
また、コラボレーション型・集中型など業務特性に応じてゾーニングを行うことで、“部署間のつながりを強化しつつ、集中環境を維持する” 最適な配置が実現できます。
▼よくある動線の問題例
|
問題タイプ |
内容 |
影響 |
|
部署が遠い |
情報共有に時間がかかる |
生産性低下 |
|
会議室までの距離が長い |
移動時間が増える |
転記ミス・時間ロス |
|
プリンターが遠い |
日常業務が非効率 |
小さなストレス蓄積 |
|
通路の混雑 |
移動が妨げられる |
集中力低下 |
動線は、フロア戦略の成否を分ける重要な視点です。
(4)将来のレイアウト変更が容易かどうか
企業が成長し続ける限り、組織構造や配置は変わります。そのため、フロア構成を見直すときには、将来の変化にどれほど柔軟に対応できるかを確認することが必要です。
特に、配線ルート・什器の可動性・天井高・空調ゾーンの可変性 などは、レイアウト自由度に大きな影響を与えます。柔軟に変更できるオフィスは、将来的な工事コストの削減にもつながります。
7. フロア分割・集約の判断を誤らないためのプロセス

フロア構成の見直しは、企業の働き方・生産性・コスト構造に直結する重要な経営判断です。
感覚的な判断ではなく、データと現場の声をもとにしたプロセスを踏むことで、最適で持続可能なフロア戦略を導くことができます。
ここでは、誤りを防ぐために不可欠なプロセスを体系的に示します。
(1)現状利用データの取得と分析
席の稼働率、会議室の利用率、通路の混雑度など、現状のオフィス利用データを収集することで、実際にどのフロアがどれだけ使われているかが明確になります。定量データは感覚や個人の意見に左右されず、客観的な判断材料となるため、フロア戦略において非常に重要です。
特に、センサーや予約システムを活用したデータ収集は、「いつ・どこが・どれだけ使われているか」 を細かく分析でき、分割・集約の方向性を高精度で導くことができます。
▼主要データ項目
|
データ項目 |
意味 |
判断に使えるポイント |
|
席稼働率 |
実際に使われている席の割合 |
席数過不足の判定 |
|
会議室利用率 |
部屋ごとの稼働状況 |
過剰/不足の特定 |
|
ピーク時間帯 |
混雑が最大となる時間 |
導線・面的課題を把握 |
|
滞在時間 |
部署ごとの滞在傾向 |
ゾーニングの再検討 |
これらのデータは、最適なフロア構成を論理的に導く基礎情報となります。
(2)社員の働き方や課題感を把握する
データ分析だけでは把握しきれない課題を知るためには、現場の声を収集することが不可欠です。アンケートやヒアリングを通じて、社員が不便に感じているポイントや、必要としている働く環境を把握します。
特に、ハイブリッドワークの浸透に伴い出社スタイルが多様化しているため、「誰が・どの頻度で・どのスペースを利用するか」 を理解することが重要になります。
(3)分割・集約のシミュレーションを行う
分割案と集約案のそれぞれで、席数、会議室、動線、コストなどの変化をシミュレーションします。こうすることで、どちらを選んだ場合に企業メリットが最大化されるかを客観的に比較できます。
シミュレーションは、レイアウト案の比較だけでなく、「増員時の対応」「将来のレイアウト変化」まで見通した検討を行うことがポイントです。これにより、短期最適ではなく中長期最適の判断 が可能となります。
(4)コストと定性的効果の両面で評価する
分割・集約判断には、賃料・設備費などの定量コストだけでなく、コミュニケーションや生産性などの定性的効果も含めて評価することが必要です。
たとえ短期コストが増えても、長期的に生産性が向上する場合は、結果的に企業価値が高まる可能性があります。特にフロア集約は、「組織の一体感」や「意思決定速度」 に影響するため、金額では測れないメリットを考慮すべきです。
▼評価観点の例
|
観点 |
内容 |
フロア戦略への影響 |
|
定量コスト |
賃料・共益費・管理費 |
直接的な経営インパクト |
|
生産性 |
連携しやすさ・移動効率 |
組織パフォーマンス向上 |
|
ワークスタイル適合性 |
部署特性との一致度 |
定着率・働きやすさ向上 |
|
将来柔軟性 |
レイアウト変更のしやすさ |
長期コスト抑制 |
(5)経営層・現場・総務の三者で意思決定する
フロア戦略は経営判断でありながら、現場運用に直結するため、特定部署だけで決めると失敗するリスクがあります。経営・現場・総務(ファシリティ)の三者が同じテーブルで議論することで、最適解に近づきます。
特に総務部門は、設備・法令・コスト・働き方などの要素を横断的に理解しているため、分割・集約を成功させるための調整役として重要な役割を果たします。
8. まとめ

フロア分割・集約は、単なるレイアウト調整ではなく、企業の成長ステージ・働き方・コスト構造に密接に関わる戦略的な意思決定です。
どちらを選ぶかによって、コミュニケーションの質、生産性、運用コスト、さらには組織文化にまで影響が及びます。そのため、現状の利用データと社員の働き方を正確に把握し、複数シナリオを比較しながら、短期と長期の両面で最適解を導くことが求められます。
また、業種特性や将来の事業計画に応じて、「集約が生産性を高めるケース」「分割が集中環境を確保するケース」 など、適切な選択肢は企業によって異なります。
重要なのは、自社の組織運営に最も適したフロア構成を継続的にアップデートし、変化に強いオフィスを構築する姿勢です。フロア戦略を経営視点で捉えることで、オフィスは単なる固定費ではなく、組織を強くするための“投資”として機能します。
企業はこれを機に、自社の空間戦略を見直し、より高い生産性と働きやすさを実現するオフィスづくりを推進していくことが重要です。
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