【経営】地価高騰時代のオフィス戦略|コスト上昇とどう向き合う?
1. オフィスコスト上昇が企業経営に与える影響
近年、都市部の地価上昇や建設費の高騰、人件費の増加などが重なり、オフィス賃料は多くの企業にとって避けられない負担となっています。特に東京・大阪などの大都市圏では、優良立地・新耐震・高グレードビルへの需要が増加し、賃料が上昇傾向にあります。
こうした環境変化の中で、企業は従来の「広いオフィス=成長の象徴」という考え方から脱却し、より柔軟で合理的なオフィス戦略へと舵を切る必要があります。
本記事では、地価高騰時代において企業がどのようにコストと向き合い、最適なオフィス運用を行うべきか、その具体的な視点と実践策を8章にわたって解説します。
2. 地価高騰の背景と今後の市場動向

地価が上昇している背景には、短期的な要因だけでなく、構造変化による長期的な要因が複雑に絡み合っています。企業が今後のオフィス戦略を考えるうえでは、こうした市場動向を正しく理解し、長期的視野で意思決定を行うことが不可欠です。
以下では、地価高騰の主な背景と今後の方向性について整理します。
(1)建設コストの上昇
国内では、建設に関わるあらゆるコストが上昇しています。原材料価格の高騰や人材不足は慢性的な問題となっており、結果として 「建物1㎡あたりの供給コストが上がり続けている」 という状況が続いています。そのため、新築ビルは当然ながら、既存ビルの賃料にも波及し、長期的に高止まりが予測されます。
<建設コスト上昇の主な要因>
- 原材料(鉄鋼・木材など)の高騰
- 技術者・作業員不足による人件費増
- 物価上昇に伴う総合的な工費の上昇
こうした状況から、企業には 「賃料が下がりにくい市場環境を前提としたオフィス戦略」 が求められているといえます。
(2)都市集中による需要増加
都市部への企業集中も、地価の押し上げ要因となっています。大企業・外資企業・スタートアップがこぞって都市中心部に集まり、「優良立地の需要が供給を上回る」 状況が続いています。
とりわけ東京では、再開発エリアの増加により高グレードビルが増える一方、空室率は依然として低水準です。
<都市集中が加速する背景>
- 都市部の採用競争の激化
- 交通利便性の高さ
- 顧客接点・ブランド価値の向上を重視する企業の増加
需要が継続的に強いことから、企業は 「立地のこだわりがコスト増を招きやすい」 点を認識し、選択肢を広く持つことが必要になります。
(3)ハイブリッドワークによるオフィス価値の変化
コロナ禍以降、オフィスの価値は単なる「働く場所」から、「集まる理由のある場所」へと再定義されました。出社が必須でなくなったいま、企業は“集まるべき環境”にこそ投資するようになり、その結果として高品質ビルへの需要が集中する傾向が生まれています。
<需要が高まるオフィスの特徴>
- 高い快適性(空調・静音・セキュリティ)
- 多様な働き方に対応できるレイアウト
- 高いブランド価値と立地力
こうした価値観の変化により、「高グレードビルは値下がりしにくい」 という構造が強まり、市場の二極化が加速しています。
3. コスト上昇が企業にもたらす課題

地価や賃料の高騰は、単にオフィス維持費の増加にとどまらず、企業の経営判断や働き方の仕組み、組織文化にまで影響を及ぼします。
ここでは、企業が直面する主要な課題を整理し、それぞれの背景となるリスクを解説します。
固定費の増加
賃料は企業の固定費の中でも大きな割合を占めるため、地価の上昇は 「利益を直接圧迫する構造的なリスク」 となります。特に中規模以上の企業では、オフィス面積が大きいほど負担増が顕著で、経営戦略に影響を与えるケースもあります。
また、賃料は一度契約すると容易に下げられないため、長期的な財務負担となる点も見逃せません。企業は、固定費の増加を前提に、より精緻なオフィス戦略が求められています。
働き方とのギャップ
出社率が下がり、社員が常にオフィスにいるわけではなくなった現在、広いオフィスが“余剰コスト化”する企業が増えています。これは 「実際の利用率と賃料の支払いが乖離している状態」 であり、企業の効率性を低下させる大きな課題です。
さらに、ハイブリッドワークに対応できていないオフィスの場合、社員が働きにくさを感じ、生産性が低下するリスクもあります。働き方の変化にオフィスが追いついていないことが、コスト面でも人的面でも問題となっています。
オフィス移転の難易度上昇
賃料高騰により、企業が移転先を探す際に条件が合致する物件が減少し、移転判断が難しくなっています。特に 「立地・面積・設備のバランスを満たす物件の希少性」 が高まっており、希望条件を満たす選択肢が大幅に減っています。
さらに、競争率の高いエリアでは早期に物件が埋まるため、迅速な意思決定が求められ、社内調整が追いつかないケースも増えています。この環境では、移転計画そのものがリスクになりうる状況です。
採用・ブランドとの関係性の複雑化
オフィスの立地やビルグレードは、企業のブランドイメージや採用力に直結しています。特に若手人材は 「働く環境の快適性」や「立地の利便性」 を重視する傾向が強く、オフィス品質の低下は採用競争力を落とす可能性があります。
また、顧客との商談においても、オフィスの雰囲気は信頼感に影響するため、安易なコスト削減は企業価値を損ねるリスクをはらみます。コストとブランドのバランスをどう取るかが、より難しい判断になっています。
4. 企業が検討すべき選択肢一覧
地価や賃料が高騰する中で、企業は従来の「面積を確保する」だけの発想ではなく、より柔軟で多角的なオフィス戦略を検討する必要があります。特に近年は働き方の多様化が進み、社員の出社率や業務特性に応じた最適化が求められています。
つまり、企業が向き合うべきは 「どのコストを削減し、どの価値に投資するか」 という視点であり、選択肢を理解したうえで自社に合った方法を組み合わせることが重要です。
以下では、地価高騰時代に有効となる代表的な戦略を整理します。
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選択肢 |
概要 |
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① 面積縮小(スリム化) |
出社率に合わせて席数・会議室を最適化 |
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② レイアウト刷新 |
既存面積のまま使い方を見直し、体感効率を向上 |
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③ エリア変更 |
中心部から周辺部へ移転してコスト削減 |
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④ サテライト活用 |
集中・会議・商談など機能分散型へ移行 |
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⑤ フレキシブルオフィス導入 |
面積を変動させながら利用できる仕組み |
企業が選ぶべき戦略は一つではなく、複数を組み合わせることで最大の効果が生まれます。
地価高騰の中でコストと価値のバランスを保つためには、これらの選択肢を理解し、自社に合った最適な組み合わせを検討することがポイントとなります。
5. コスト最適化のための具体策

地価や賃料が高騰する中で、企業が選ぶべきは「やみくもなコスト削減」ではなく、ムダを減らしつつ価値を高める投資的な最適化です。本章では、現実的かつ実践しやすい改善策を5つの視点から整理します。
どれも単独で導入できますが、併用することでさらに効果が高まります。
(1)出社率データに基づく席数の最適化
多くの企業では、出社率が下がっているにもかかわらず従来の席数を維持しており、実態とコストが乖離しています。出社の傾向を 「アクセスログ」「入退館データ」「会議室利用状況」 から分析することで、適切な席数が明確になります。
データに基づく最適化は、感覚的な判断よりも精度が高く、無駄な面積利用を大幅に削減できます。また、浮いた面積を集中ブースやWEB会議室へ転換し、働きやすさを向上させることも可能です。
(2)会議室の需給バランス見直し
会議室不足は多くの企業の悩みですが、その原因の多くは 「部屋のサイズや用途が利用実態と合っていない」 ことにあります。実際には小規模会議の割合が多いにもかかわらず、大会議室が占有されているケースも珍しくありません。
利用データを分析し、適切なサイズに再編することで、予約の偏りが解消され、会議室の稼働効率が大幅に改善します。結果として、移転や増床をせずとも業務効率を上げられる点が魅力です。
(3)集中スペース・WEB会議ブースの導入
オープンエリアでの雑談やオンライン会議の増加により、“個別に集中できる場所”の不足が生産性低下の原因となっています。集中ブースやWEB会議ブースを導入することで、限られた面積でも作業効率を高めることができます。
特に1人用ブースはスペース効率が非常に高く、「少面積で高い価値を生む投資」 として多くの企業で採用が進んでいます。遮音やプライバシー確保にもつながり、全体の働きやすさを底上げします。
(4)エリアによる賃料差の活用
同じ都市内でもエリアによって賃料は大きく異なります。徒歩圏内の別エリアへ移動するだけで賃料が 20〜40%下がる ケースも珍しくありません。これは、「立地ブランド」と「コスト」のバランスを取り直す有効な方法です。
ただし、移転による採用・顧客印象への影響もあるため、企業文化やブランドの方向性と照らし合わせた慎重な判断が必要です。コストと価値を両立できる場所を見極めることが重要です。
(5)フレキシブルオフィスとの併用
成長スピードが速い企業やプロジェクト単位で人員が変動する組織では、固定席を増やすよりも 「必要なときだけスペースを追加できる柔軟性」 が求められています。フレキシブルオフィスを併用することで、固定費を抑えながら業務量の波に対応できます。
これにより、従来のオフィスに“可変性”が生まれ、コスト耐性の高いオフィス運用が可能になります。特に急成長期や縮小リスクのあるフェーズでは、最適化効果が大きく表れます。
6. 投資としてのオフィス改革という考え方

オフィスコストを見直す際、つい“削減”に意識が向きがちですが、それだけでは長期的に企業競争力を維持することはできません。むしろ今求められるのは、「どの領域に投資することで、企業価値を最大化できるか」という視点です。
オフィスは生産性・採用力・企業文化など、多くの価値に影響するため、戦略的アセットとして捉えることが不可欠です。特に地価高騰時代では、ただ面積を減らしたり設備を縮小するだけでは働きやすさが損なわれ、逆に生産性低下という“見えない損失”を生むリスクすらあります。
だからこそ、オフィス改革は“コストではなく投資”として評価する必要があるのです。
投資としてのメリット
◆集中・創造性向上による成果の質アップ
高品質の集中スペースや快適な環境は、社員の認知負荷を減らし、企画・提案・設計など深い思考が求められる業務の質を向上させます。
◆コミュニケーション活性化による組織力強化
設計によって偶発的な交流を生み出すことができ、組織の情報共有やスピード感が高まることで、パフォーマンス全体が向上します。
◆採用力・ブランド価値の向上
働きやすいオフィスや魅力的な立地は、候補者にポジティブな印象を与え、“この会社で働きたい”と思わせる強いメッセージになります。
◆企業文化の醸成と帰属意識の向上
オフィスそのものが企業文化を象徴する場となり、社員が会社の価値観を共有しやすくなります。これは、リモート化が進む中で特に重要な効果です。
オフィス改革を投資と捉えることで、単なるコスト削減だけでは得られない大きな価値を企業にもたらすことができます。重要なのは、「削るところは削り、価値を生むところにはしっかり投資する」 という戦略的な発想を持つことです。
地価が高騰する環境だからこそ、オフィスの在り方を再定義し、企業の未来につながる改革を実行することが求められています。
7. ケーススタディ|コスト上昇と向き合った企業の成功例

地価や賃料が高騰する環境でも、企業の工夫次第でオフィスコストを最適化しつつ働きやすさを高めることは可能です。ここでは、実際に成果を上げた企業のケーススタディを紹介し、どのような施策が効果を発揮したのかを整理します。
いずれも、コスト削減だけに偏るのではなく、働き方の改善と価値向上を両立した点に特徴があります。
(1)面積縮小+レイアウト最適化で費用10%減
ある中規模企業では、出社率データを分析した結果、全席を確保する必要がないと判断し、オフィス面積の約15%縮小に踏み切りました。その際、単純に席を減らすのではなく、集中スペースやWEB会議ブースを増設することで、社員の実働に合った環境へ再編しています。
結果として、賃料は約10%削減されたにもかかわらず、「働きやすさが向上した」という社員の声が増加し、生産性も改善。従来は不足していた会議室の混雑も緩和され、運用面でのストレスも大きく軽減された事例です。
(2)エリア変更で賃料30%削減
別の企業では、都心一等地の賃料負担が経営を圧迫していたため、同じ沿線のサブエリアに移転する方針を選択しました。移転後も主要駅からのアクセスはほぼ変わらず、顧客対応にも影響が少ないことから、ブランド価値を維持しつつコスト削減に成功しています。
結果として、賃料は約30%減となり、浮いた予算はブース増設や福利厚生の改善に再投資されました。また、エリアの落ち着いた雰囲気によって職場環境も改善し、社員の満足度向上にも貢献したケースです。
(3)フレキシブルオフィスをサテライト運用
急成長中のスタートアップでは、事業規模の変動により席数が安定しない課題がありました。そこで、本社は最小限の面積に抑えつつ、必要な時だけ利用できるフレキシブルオフィスを併用する運用へ切り替えています。
この方法により、本社は常に“適正サイズ”を維持しながら、プロジェクト増加時や採用強化フェーズでも柔軟に対応できるようになりました。結果として、固定費を抑えつつ変動への耐性が高い運用体制を実現したほか、各チームが最適な場所で働けるようになり業務効率も改善しています。
これらのケースに共通しているのは、単純にコストを削減したのではなく、働き方や組織課題に合わせて戦略的にオフィスを再構築したことです。地価高騰の状況下でも、企業が柔軟に発想を転換することで、価値を維持しながら持続可能なオフィス運用が可能となります。
8. まとめ

地価や賃料が高騰する現在、企業が求められるのは、単なるコスト削減ではなく、オフィスの価値を最大化する戦略的な視点です。オフィスの使い方を見直し、働き方データを活用し、必要なところには投資する、この姿勢が、変化の激しい環境において持続的に競争力を維持する鍵となります。
本記事で紹介したように、面積縮小・レイアウト改善・エリア変更・サテライト活用・フレキシブルオフィス併用など、企業が選べる選択肢は多様です。重要なのは、自社の働き方や成長フェーズに合った組み合わせを選び、「コスト最適化」と「働きやすさ向上」を両立することです。
地価高騰は企業にとって大きな負担である一方、オフィスを再定義し、より生産性の高い環境へアップデートする好機でもあります。固定観念にとらわれず、柔軟な発想でオフィス戦略を構築することで、企業は外部環境に左右されない強い組織へと進化できるでしょう。
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