【運用】オフィスのセキュリティ強化|入退室管理からデータ保護まで総合対策
1. オフィスのセキュリティは経営課題へ
テレワークやクラウド活用が進む現代において、オフィスセキュリティは単なる“管理部門の仕事”ではなく、企業の信用と事業継続を守る経営上の優先課題となっています。機密情報の流出、設備の破損、不正アクセスなど、セキュリティリスクは高度化し、物理・デジタルの両面から対策を講じる必要があります。
本記事では、入退室管理からネットワーク保護まで、オフィスのセキュリティ対策を総合的に整理し、企業が「どこから強化すべきか」を明確にします。
2. オフィスが抱えるセキュリティリスクの全体像

オフィスのセキュリティリスクは、単に「不正アクセスが怖い」といった単純なものではなく、物理・デジタル・運用の3つが相互に影響する複合的なリスクによって構成されています。特に働き方の多様化により、社員の出入りやデバイスの持ち出しが増えたことで、オフィスのセキュリティは以前よりも高度な管理が求められるようになりました。
ここでは、企業がまず把握すべきセキュリティリスクの全体像を3領域に分けて整理します。
(1)物理的リスク|“人の出入り”によって発生する最前線のリスク
物理的なリスクは、オフィスの出入口や執務エリアへの侵入、機材・書類の盗難など、最も目に見える形で発生します。
入退室管理が甘い、監視カメラが古い、レイアウトに死角が多いといった状況では、部外者が容易に内部へ侵入でき、情報資産や備品の持ち出しにつながる危険性があります。
<典型的な物理リスク例>
- 部外者が受付をすり抜ける
- 社員になりすました侵入者
- 机上の書類・ノートPCの盗難
- 夜間・休日の無断立ち入り
物理的対策は地味に見えますが、最も即効性が高く、セキュリティ水準を引き上げるうえで不可欠な要素です。
(2)情報・データリスク|デジタル化で急増した“見えない脅威”
デジタル領域のリスクは、クラウド利用やテレワーク普及に伴って急激に拡大しています。USBや個人端末の持ち込み、フリーWi-Fiの使用、弱いパスワードなど、社員の何気ない行動が重大な情報漏えいに繋がることがあります。
<想定される情報リスク>
- パスワードの使い回しによる不正アクセス
- ランサムウェア感染による業務停止
- 紛失PCからの情報流出
- SNSを介した内部情報の拡散
特に、昨今のサイバー攻撃は高度化しており、古いセキュリティ対策では守りきれません。企業はデバイス管理やネットワーク監視を“インフラレベル”として捉える必要があります。
(3)運用・人的リスク
どれだけ高度なセキュリティを整備しても、運用が徹底されなければ十分な効果は得られません。実際の情報漏えい事案の多くは、システムではなく“人の不注意や認識不足”によって発生しています。
<代表的な人的リスク>
- 社内ルールの形骸化
- 退職者アカウントの削除漏れ
- 私物端末から機密情報を扱う
- 廃棄書類の取り扱いミス
また、セキュリティ対策が複雑すぎると社員が「使いづらい」と感じ、裏道的な使い方をしてしまい、かえってリスクを増やす結果にもなります。
技術と運用のバランスを取り、社員が“守りやすい仕組み”を整えることが求められます。
オフィスのセキュリティは、物理リスク × データリスク × 人的リスクの組み合わせで成り立っており、どれか1つを強化するだけでは万全とは言えません。まずは、企業が抱えるリスクの種類と特徴を正しく理解することが、適切な対策の第一歩となります。
次章以降では、それぞれのリスクをどのように具体的なセキュリティ対策に落とし込むかを、段階的に解説していきます。
3. 入退室管理の強化

入退室管理は、オフィスの物理セキュリティを考えるうえで最も基本かつ重要な領域です。なぜなら、誰がオフィスに入り、どのエリアにアクセスできるか をコントロールすることで、多くの物理リスクを未然に防げるからです。
情報漏えいの多くは、デジタルではなく「人の出入り」から発生するというデータもあるほど、入退室管理は企業防御の“第一関門”として機能します。。
(1)ICカード・生体認証の導入
従来の鍵・テンキーによる管理は、複製や貸し借りが容易で、安全性に課題が残ります。現在では、ICカード、顔認証、指紋認証などの生体認証を組み合わせた多要素認証 が主流になりつつあり、オフィスのセキュリティレベルを大きく引き上げます。
ICカードは便利ですが、紛失や貸与によってリスクが生じるため、カード単体の運用では完全とは言えません。
そこで、本人固有の情報を使う生体認証を併用することで、以下の効果が得られます。
- なりすましの防止
- 入退室ログの正確性向上
- 貸し借りによるリスクの排除
また、クラウド管理型の入退室システムを導入する企業も増えており、複数拠点のログを一元管理できるため、監査対応や不審行動の追跡もスムーズになります。
(2)来訪者管理システムの整備
来訪者管理は、外部の人間がオフィスに入る際のセキュリティを担う重要なプロセスです。紙の受付簿や口頭での入館手続きは、記録の不備や情報漏えいの観点から限界があります。そのため、近年は タブレット受付・QRコードチェックイン など、デジタル化が急速に進んでいます。
来訪者管理システムを導入することで、以下の効果が得られ、受付業務の負荷も大きく軽減できます。
- 来訪者の情報・入退室時刻の自動記録
- 社員側での事前招待・承認プロセス
- バッジ発行と返却チェックの自動化
- 不審者の入館防止
来訪者ログは、万が一のセキュリティ事故発生時に原因調査の手掛かりにもなるため、企業防御の観点から非常に重要なデータです。
(3)ゾーニング管理
オフィス全体を“誰でも入れる空間”にしてしまうのは大きなリスクです。情報の重要度に応じてエリアを区分し、アクセスできる人を限定する ゾーニング管理 を行うことで、セキュリティレベルは格段に向上します。
代表的なゾーン区分としては次のようなものがあります。
- 共用エリア(受付・会議室):外部ゲストも入るため最も開放的
- 一般執務エリア:社員の標準作業空間
- 機密エリア(人事・経理・役員室):限られた社員のみがアクセス可能
- サーバールーム・電算室:最も厳重な管理が求められる
ゾーニング管理を行うことで、たとえ外部者が共用エリアに入ったとしても、機密エリアへの侵入を防ぐ“第二関門”“第三関門”を設けることができます。
また、立ち入り履歴をエリア別に記録することで、不審行動発見や事故発生時の迅速な検証にも役立ちます。
4. ネットワーク・データ保護

オフィスのセキュリティ対策を考えるうえで、ネットワークやデータ保護は「物理対策と同等か、それ以上に重要な領域」です。クラウド活用、テレワーク、モバイル端末の普及により、企業の情報はオフィス内に閉じなくなりました。
その結果、ネットワーク環境・端末管理・アクセス権管理など、情報を守るための仕組みを総合的に整備する必要があります。
(1)ゼロトラスト思想にもとづくネットワーク管理
従来の「社内ネットワークは安全、社外は危険」という境界防御型の考え方では、現在の働き方には対応しきれません。VPN接続だけに頼った運用では、内部侵入を許した際に深刻な被害につながるケースが増えています。
こうした背景から、近年は ゼロトラスト(Zero Trust) という考え方が重視されています。
ゼロトラストでは、“どんなアクセスも信用せず、常に検証する” ことが基本ルールとなり、以下のような細分化された制御が可能です。
- 役職や部署ごとのアクセス権制御
- 端末の状態(OS更新・ウイルス対策ソフト)を確認してアクセス可否を判断
- 異常行動(深夜の大量ダウンロードなど)の自動検知
- クラウドサービスの操作ログを常時監視
ゼロトラストを導入すると、オフィス内外を問わず同じ水準のセキュリティを保つことができるため、テレワークと非常に相性の良い仕組みです。
(2)端末管理と暗号化の徹底
ノートPCやスマートフォンは、企業情報が詰まった“持ち運べる情報資産”と言えます。端末を紛失しただけで、大量のデータが外部に漏れる可能性があるため、端末管理(EMM/MDM) の導入は必須です。
代表的な端末管理の対策は次の通りです。
- 端末のリモートロック・データ消去機能
:紛失・盗難時でも情報漏えいを防止できます。 - OS・アプリの強制アップデート
:脆弱性を放置しないことで攻撃リスクを抑えます。 - USB利用制限・データ持ち出し制限
:内部不正や不用意な情報コピーを防ぎます。 - ディスク暗号化(BitLocker等)
:端末の物理的な盗難に強く、復号にはパスキーが必要です。
近年は、私物端末(BYOD)を業務に利用するケースが増えていますが、管理が不十分だと企業リスクを大きく高めます。そのため、私物端末を使う場合にも、アプリ単位で業務データを管理する「コンテナ方式」を採用するなど、境界を明確にする必要があります。
(3)バックアップ体制の強化
ランサムウェア攻撃は年々増加しており、一度感染するとデータが暗号化され、復旧に多額のコストや時間が必要になります。そのため、バックアップは“もしものため”ではなく、“日常的に必要なインフラ”として整備することが求められます。
企業が整えるべき基本方針は 3-2-1ルール です。
- 3種類以上のコピーを保持する
- 2つ以上の異なる媒体に保存する
- 1つはオフラインまたは外部に保管する
クラウドにバックアップがあっても、そのクラウド自体が攻撃を受ければ意味がありません。オフライン(外部ストレージ等)でのバックアップは、ランサムウェアに最も強い保存方法です。
さらに、バックアップは “保存するだけ”では不十分 で、定期的なリストアテスト(復元テスト)を行うことで、実際に復元できる状態かどうかを確認する必要があります。これを怠ると、いざ復旧しようとした際に「復元できない」という深刻な事態が起こり得ます。
5. 書類・物品管理のセキュリティ対策

デジタル化が進んでいるとはいえ、企業の情報資産には依然として「紙書類」や「物理的な備品」が多く含まれています。契約書、経理・人事資料、申請書類、メモ帳、USBメモリ、ノートPCなど、物理的に持ち出せる資産は意外に多く、管理が甘い場合は大きな情報漏えいにつながります。
そのため、書類管理や物品管理は、オフィスセキュリティの基盤として欠かせない領域です。
(1)紙書類の管理ルール
紙書類に関するトラブルは、「気づかないうちに机上に放置していた」「会議室に置き忘れた」といった日常的な行動から発生することがほとんどです。特に、来訪者が出入りするゾーンや共用スペースでは、紙1枚でも重大な情報漏えいにつながる可能性があります。
企業が整備すべき基本ルールは以下のとおりです。
- 机上に機密資料を置いたまま離席しない
- 重要書類は施錠保管が原則
- 不要になった書類は溶解処理または専用回収ボックスへ
- 会議室使用後の“置き忘れチェック”をルール化する
また、ペーパーレス化を進めることで紙書類そのものを減らし、リスク要因を根本から削減することも効果的です。電子署名・電子契約の普及により紙そのものの必要性が低下しており、セキュリティと業務効率の両方を高められます。
(2)鍵付きキャビネット・ロッカー活用
紙書類や機密ファイルの保管は、「どこに」「誰がアクセスできるか」を明確にすることが最重要です。鍵付きキャビネット、パスコードロッカー、セキュリティキャビネットなどを活用し、アクセス権を部署単位・役職単位で分けることで、情報流出リスクを大幅に抑えられます。
さらに、次のような取り組みを追加すると管理精度が高まります。
- 保管場所ごとに“管理責任者”を設定する
- 書類棚にアクセスログを残す(ICロッカー等)
- 保管期間のルール(1年・3年・7年など)を明確化し、棚卸しを定期実施
特に人事・経理・契約関係は情報の重要度が高いため、厳格なアクセス制御が欠かせません。物理的制限は、内部不正の抑止力としても大きな効果があります。
(3)物品の持ち出し管理
ノートPC、モニター、モバイルWi-Fi、USBメモリなど、物理的に持ち運べる機器は情報資産そのものでもあります。これらを「誰が」「いつ」「どこへ持ち出したか」を管理せずに運用すると、紛失・盗難・情報漏えいのリスクが急増します。
企業が整備すべき管理ポイントは次のとおりです。
- 貸出・返却をデジタルで記録する(台帳ではなくシステム管理へ)
- USB利用を制限し、“許可ユーザーのみ利用可”とする
- 私物USBや外付けHDDの利用禁止ルールを明確化
- 社外への持ち出しルール(申請制・上長承認)を整備
特にUSBメモリは、今なお情報漏えい事故の主要原因のひとつであるため、ルールの徹底が欠かせません。その一方で、使いやすさを損なうと“抜け道”が生まれるため、業務負荷とセキュリティのバランスを取りながら運用設計することが重要です。
6. 社員教育とルール整備

オフィスのセキュリティ対策において、最も見落とされやすい一方で、最も重要なのが「社員教育」と「ルール整備」です。高度なシステムを導入しても、社員が正しく使わなければ、セキュリティレベルは想定の半分にも届きません。実際、多くの情報漏えい事故は“悪意のある攻撃”ではなく“社員の不注意や判断ミス”によって引き起こされています。
そのため企業は、仕組みと教育の両面から社員の行動を支える環境を整える必要があります。
(1)定期的なセキュリティ研修
セキュリティリスクは日々変化しており、「一度説明したから大丈夫」という考え方では対策になりません。フィッシングメール、SNS経由の情報流出、偽サイト、ランサムウェアなど攻撃手法は常に進化し続けており、社員の“危険に気づく力”を継続的に高めることが重要です。
定期研修では、以下の内容を組み合わせることで効果が高まります。
- 最新の事例(攻撃手口・事故例)を解説
- 社員の業務に紐づく“起こりやすいミス”を共有
- 不審なメールを見極めるトレーニング
- 実際に起きた社内トラブルの再発防止策
特に効果的なのは、疑似フィッシングテストなど“体験型”の研修です。習った知識を実務に結びつけることで、社員は「何が危険なのか」を直感的に理解できるようになります。
(2)明確な社内ルールとガイドライン
セキュリティルールは、内容が難しいほど守られにくくなります。曖昧な表現や例外の多さは、社員に判断を委ねてしまい、結果的にルール違反を招きます。企業が整備すべきルールは、誰が読んでも理解でき、すぐ行動に移せること が条件です。
代表的なルール整備項目は以下の通りです。
- パスワード管理(複雑性・変更頻度・保管方法)
- USB等外部媒体の使用可否
- 私物端末(BYOD)での業務ルール
- 社外作業やカフェ利用時の注意点
- 機密書類の取り扱い基準
- Web会議での情報管理(背景・録画・資料共有のルール)
さらに、ルールは作って終わりではなく、「更新し続けること」が不可欠です。新しい働き方に合わせて、毎年見直す体制を整えることで、形骸化を防ぎ、運用の実効性を保つことができます。
(3)退職者のアカウント対策
退職者や異動者のアカウント管理は、オフィスセキュリティにおいて最も見落とされやすい領域のひとつです。どれだけ堅牢なシステムを導入していても、使われなくなったアカウントが残ったままでは、そこが“侵入口”として悪用される可能性があります。実際、多くの情報流出事故は「削除漏れのアカウント」や「不要な権限が残ったままのユーザー」が原因で発生しています。
そのため企業は、退職・異動のタイミングでアカウントや権限を迅速かつ確実に処理する仕組みを整える必要があります。特に退職のケースでは、処理の遅れがそのままリスクにつながるため、明文化された一連のフローを運用することが欠かせません。
<適切なアカウント管理のポイント>
- 退職が決定した時点で、関係部署へ速やかに通知される仕組みを整える
- 退職日と同日にアカウントを停止できるよう、情報システム部門と連携を強化する
- 異動に伴う“不要な権限”を定期的に整理し、最小限の権限設定(Least Privilege)を徹底する
- アカウント停止後は、端末の回収・データ初期化・ログ確認まで一連の手続きを確実に行う
また、ID管理を手作業で行うと抜け漏れが生じやすいため、IDaaSなどの統合管理ツールを使って「アカウント発行から権限付与・削除までを自動化する」というアプローチも有効です。ツールによる一元管理を導入することで、人事情報の更新と同期してアクセス権を自動調整できるため、人的ミスを大幅に減らせます。
退職者・異動者アカウントの管理は、企業の情報資産を守るうえで見逃せない基本動作です。システム任せでも、ルール任せでもなく、両方の仕組みを組み合わせて運用レベルを引き上げること が求められます。
7. 最新ビルが備える高度セキュリティの例

新しいオフィスビルは、防犯対策やITインフラが標準化されている場合が多く、企業のセキュリティレベルを底上げできます。
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セキュリティ機能 |
内容・メリット |
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非接触型入退室 |
偽造や複製リスクが低く、ログ管理も容易 |
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監視カメラ(AI解析付き) |
不審行動を自動検知し、早期対応が可能 |
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セキュリティゲート |
部外者の侵入を防ぎ、受付負荷を軽減 |
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サーバールーム専用設備 |
温度管理・防火設備など物理リスクを低減 |
古いビルでは対応しきれない領域があるため、移転時にはビルスペックが安全性に直結します。
8. まとめ

オフィスのセキュリティ強化は、物理面・IT面・運用面が揃って初めて効果を発揮します。どれか1つが欠ければ、残りの対策の価値も半減してしまいます。入退室管理、ネットワーク保護、書類管理、社員教育、ビルスペックの確認の、これらを総合的に組み合わせることで、セキュリティレベルは飛躍的に向上します。
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