【設計】エントランスで差がつくオフィス選び|第一印象を戦略に変えるための実務視点
1. なぜエントランスがオフィス選びの差になるのか
オフィス選定の議論では、立地や賃料、面積といった条件が優先されがちですが、実務の現場で後から評価が分かれやすいのがエントランスのあり方です。完成後や入居後に「思っていたより印象が弱い」「来訪対応がしづらい」と感じるケースは少なくありません。
エントランスは単なる通過点ではなく、企業の姿勢や考え方が最初に伝わる空間です。社員、来訪者、採用候補者など、オフィスに関わる人の多くが、最初に触れるのがこの場所だからです。
本記事では、エントランスがオフィス選びにおいてなぜ重要なのかを整理し、見た目だけで終わらせないための実務的な判断視点を解説します。
2. エントランスの役割を正しく捉える

エントランスを評価する際に陥りやすいのが、「見た目の良さ」や「立派さ」だけで判断してしまうことです。しかし、エントランスは単なる装飾空間ではなく、明確な役割を持った機能空間です。その役割を正しく捉えられているかどうかで、オフィス全体の印象や使われ方に大きな差が生まれます。
ここでは、エントランスが担う役割を三つの観点から整理します。
(1)エントランスは企業の「最初の説明装置」である
エントランスは、企業について事前情報を持たない来訪者に対して、最初に企業像を伝える空間です。業種や規模感、雰囲気、働き方の姿勢などが、言葉を使わずに伝わります。
そのため、エントランスは単にきれいであることよりも、自社がどのような企業なのかを無理なく表現できているかが重要になります。過度な演出や抽象的なデザインは、意図が伝わらなければ逆効果になることもあります。エントランスは、企業の姿勢を「説明しすぎずに伝える」ための装置だと捉える必要があります。
(2)来訪者と社員の両方を意識する必要がある
エントランスは来訪者のための空間という印象が強い一方で、社員にとっても日常的に通過する場所です。社員が違和感や居心地の悪さを感じるエントランスは、時間の経過とともに評価を下げていきます。
良いエントランスとは、来訪者にとって分かりやすく安心感があり、同時に社員にとっても自然に受け入れられる空間です。非日常感を出しすぎず、日常業務との距離感を保つことが、両立のポイントになります。
(3)エントランスはオフィス全体の「期待値」を調整する空間である
エントランスは、その先に広がるオフィス空間への期待値を無意識に調整する役割も担っています。エントランスで受けた印象と、執務エリアの実態に大きな乖離があると、来訪者は違和感を覚えやすくなります。
そのため、エントランスだけを切り離して考えるのではなく、オフィス全体との一貫性を意識することが重要です。エントランスは主役ではなく、オフィス全体を自然につなぐ導入部として設計されているかどうかが問われます。
3. エントランスで「差」が生まれるポイント

同じような立地、同じ程度の賃料水準のオフィスであっても、エントランスの印象によって「良いオフィスだ」と評価されるかどうかは大きく変わります。その差は、派手さやデザインの新しさではなく、エントランスにどれだけ意図が込められているかによって生まれます。
ここでは、実務の現場で評価の差が出やすいポイントを三つの観点から整理します。
(1)分かりやすさと迷わせない動線が確保されているか
エントランスで最も基本となるのが、来訪者が迷わず行動できるかどうかです。受付の位置が分かりにくい、どこで待てばよいのか判断できないといった状態は、それだけで第一印象を損ないます。
動線や視線誘導が整理されたエントランスは、説明をしなくても自然に行動できるため、来訪者に余計な緊張や不安を与えません。「考えなくても使える」状態がつくられているかどうかが、評価の分かれ目になります。
(2)過剰でも簡素でもない印象設計になっているか
エントランスは企業の顔である一方、過度に力を入れすぎると実態とのズレが生じます。立派すぎるエントランスは、企業規模や業務内容によっては違和感を与え、「背伸びしている」という印象につながることもあります。
逆に、必要最低限すぎるエントランスは、来訪者に不安や簡素すぎる印象を与えかねません。重要なのは、企業の実態と釣り合った印象になっているかという視点です。差がつくエントランスは、ちょうどよい水準を見極めています。
(3)エントランスに役割の整理ができているか
評価されるエントランスには、「何をする場所なのか」が明確に整理されています。受付、待機、通過といった役割が曖昧だと、空間はきれいでも使いづらくなります。
ここで、エントランス設計時に整理しておくべき代表的な役割を確認します。
<エントランスに求められる主な役割の整理>
- 来訪者が迷わず受付できる
- 待機が必要な場合に無理なく過ごせる
- 社員の動線を過度に妨げない
- セキュリティと利便性のバランスが取れている
これらの役割が整理されていないエントランスでは、運用が始まった後に不満が表面化しやすくなります。差がつくエントランスは、見た目以前に役割設計が整理されている点が共通しています。
(4)オフィス全体との一貫性が保たれているか
エントランス単体で完成度が高くても、オフィス全体と印象が乖離していると、評価は下がります。エントランスで受けた期待と、執務エリアの実態が大きく異なる場合、来訪者は無意識に違和感を覚えます。
差がつくエントランスは、主張しすぎることなく、オフィス全体への導入部として自然に機能しています。エントランスを特別扱いせず、全体の流れの中で位置付けられているかどうかも、重要な判断ポイントです。
4. エントランスは「きれい」より「使われる」かで判断する

エントランスは、完成直後の印象で評価されがちですが、オフィスの一部である以上、日常的にどのように使われているかが本質的な評価軸になります。内覧時に好印象であっても、運用が始まると「使いづらい」「落ち着かない」と感じられるエントランスは少なくありません。
良いエントランスかどうかを判断するためには、デザインの完成度ではなく、「実際の業務や来訪対応の中で無理なく使われているか」を想像する必要があります。その想像が具体的にできるかどうかが、判断の分かれ目になります。
ここでは、エントランスが実際に機能しているかを見極めるための視点を整理します。
<エントランスが実際に機能しているかを判断する視点>
- 来訪時の受付や待機が無理なく行えるか
- 混雑や滞留が起きにくい構成になっているか
- 社員の動線を過度に妨げていないか
- セキュリティと利便性のバランスが取れているか
これらの視点で見ると、内覧時には評価が高かったエントランスであっても、実務では使われにくいケースがあることに気付きます。たとえば、見栄えを優先したレイアウトが、来訪対応時の動線を妨げ、結果として混雑や滞留を生んでしまうことがあります。
一方で、装飾や演出が控えめでも、業務の流れや来訪頻度に合ったエントランスは、特別なルールがなくても自然に機能します。使われる前提で設計されたエントランスは、時間が経っても評価が下がりにくいという特徴があります。
エントランスを判断する際には、「きれいかどうか」ではなく、「この状態を毎日続けられるか」という視点を持つことが重要です。日常運用に無理がないエントランスこそが、結果として企業の評価を安定的に支える空間になります。
5. 運用し続けられるエントランスかという視点

エントランスは完成した瞬間が最も整って見える空間ですが、評価が分かれるのはその後の運用段階です。日常業務の中で無理なく使い続けられるかどうかは、設計や仕組み以上に、運用の現実をどこまで想定できているかに左右されます。
ここでは、エントランスを「作って終わり」にしないために押さえておくべき運用視点を整理します。
(1)受付・セキュリティ運用が現実に合っているか
エントランス運用で最も負荷がかかりやすいのが、受付とセキュリティの仕組みです。有人受付、無人受付、システム対応など選択肢はありますが、重要なのは自社の来訪頻度や体制に合っているかという点です。
仕組みとしては成立していても、担当者が常に対応を求められる運用や、来訪者にとって分かりにくい手順になっている場合、時間の経過とともに形骸化します。運用を前提にしたエントランスは、「理想的か」ではなく「続けられるか」で評価する必要があります。
(2)来訪頻度と運用コストのバランスが取れているか
エントランス運用では、来訪頻度とコストの関係を整理しておくことが欠かせません。来訪が少ないにもかかわらず、常時人を配置する運用や、高度な設備を維持し続ける設計は、徐々に違和感を生みます。
ここで、来訪頻度に応じたエントランス運用の考え方を整理します。
▼来訪頻度別に見るエントランス運用の考え方
|
来訪頻度 |
運用の考え方 |
注意点 |
|
高い |
有人・明確な受付導線 |
人的負荷の偏り |
|
中程度 |
無人受付+補助対応 |
案内の分かりやすさ |
|
低い |
簡素な運用設計 |
過剰設備にならないか |
このように整理すると、エントランス運用は一律ではなく、利用実態に応じて最適解が変わることが分かります。コストと運用負荷を冷静に見極めることが、長期的な納得感につながります。
(3)運用ルールが属人化していないか
エントランス運用で見落とされがちなのが、対応が特定の人に依存していないかという点です。受付対応や来訪案内が暗黙知になっていると、担当者不在時に混乱が生じやすくなります。
運用し続けられるエントランスでは、誰が対応しても一定の品質が保たれるよう、運用ルールや判断基準が整理されています。細かく縛る必要はありませんが、最低限の共通認識があるかどうかが、継続性を左右します。
エントランスは「見せる空間」であると同時に、「回し続ける空間」です。運用を前提に考えられているかどうかが、時間が経っても評価されるエントランスかどうかを決める重要な分岐点になります。
6. 不動産・コスト視点で見るエントランスの考え方

エントランスは印象やデザインが注目されやすい一方で、不動産・コストの観点では見落とされやすい領域でもあります。しかし実務上は、エントランスも明確に面積コスト・投資コスト・運用コストを伴う不動産要素の一部です。
良いエントランスを選べている企業ほど、「雰囲気が良いか」ではなく、「このエントランスにかけるコストは妥当か」という視点で冷静に判断しています。
(1)エントランス面積は「広さ」ではなく「役割」で決める
エントランス面積を検討する際、広いほうが良い、立派なほうが良いと考えてしまうケースは少なくありません。しかし、不動産コストの視点では、面積はそのまま賃料負担に直結します。
重要なのは、エントランスが担う役割に対して、必要十分な面積かどうかです。来訪頻度が高く、待機や応対が発生するオフィスと、来訪が限定的なオフィスでは、求められる面積は大きく異なります。役割以上に広いエントランスは、印象面では評価されても、コスト面では説明が難しくなります。
(2)内装投資は契約条件と切り離さずに考える
エントランスは内装投資が集中しやすい空間ですが、その投資は賃貸借契約の条件と必ずセットで考える必要があります。契約期間が短いにもかかわらず高額な内装投資を行うと、投資回収の説明がつかなくなります。
良いエントランスとは、契約期間の中で無理なく使い切れる投資水準に抑えられているエントランスです。原状回復条件や再利用の可能性も含めて整理できているかどうかが、不動産視点での重要な判断ポイントになります。
(3)エントランスは「固定費」として説明できるか
エントランスにかかるコストは、賃料だけでなく、清掃、設備維持、受付運用など、継続的な固定費として発生します。そのため、導入時だけでなく、維持し続ける前提で説明できるかが問われます。
見た目の評価が高くても、維持コストが想定以上にかかる場合、時間の経過とともに負担感が増していきます。良いエントランスは、「初期費用」ではなく「継続コスト」を含めても納得感がある設計になっています。
(4)将来の見直しを前提にコストを捉えているか
オフィスは一度整えたら終わりではなく、組織規模や来訪スタイルの変化に応じて見直しが必要になります。エントランスも同様に、将来の変更や簡素化が可能かどうかを前提に考える必要があります。
固定的で変更が難しいエントランスは、将来の意思決定を縛る要因になります。良いエントランスとは、現在の最適解でありながら、将来の選択肢を残しているエントランスです。この柔軟性が、不動産・コスト視点での評価を高めます。
エントランスを不動産・コストの視点で捉えることは、見た目を軽視することではありません。その価値を、数字と条件で説明できるかどうか。この視点を持てるかどうかが、エントランスで差がつくオフィス選びの分岐点になります。
7. エントランスで評価を高めている企業の共通点

エントランスで評価を高めている企業は、特別に豪華な空間をつくっているわけではありません。差が生まれているのは、エントランスに対する考え方と位置付けです。オフィス全体の一部として、役割・運用・コストを整理したうえで設計されているかどうかが、評価の分かれ目になります。
ここでは、エントランスが企業評価につながっているケースに共通する考え方を整理します。これらは成功事例というよりも、違和感が生じにくい選び方をしている企業の共通点と捉えると理解しやすいでしょう。
<エントランスで評価を高めている企業に共通する考え方>
- 企業規模や業務内容に合った印象設計をしている
- 見せる要素と使う要素を切り分けて考えている
- 運用負荷やコストを含めて判断している
- 将来の変更や見直しを前提に設計している
これらの企業では、エントランスを「企業の顔」として過度に演出することはありません。むしろ、実態に合わない演出を避け、来訪者が自然に安心できる印象を重視しています。その結果、背伸びした印象や違和感が生まれにくくなります。
また、見せる要素と使う要素を切り分けて考えている点も特徴的です。すべてをデザインで表現しようとするのではなく、運用に必要な機能を優先したうえで、必要な範囲で印象づくりを行っています。このバランス感覚が、日常運用に無理を生まない理由です。
さらに、運用負荷やコストを含めて判断しているため、完成後に「想定より手間がかかる」「維持が難しい」といった問題が起きにくくなります。エントランスを短期的な印象ではなく、継続的に管理する空間として捉えている点が共通しています。
最後に、将来の変更や見直しを前提に設計している点も見逃せません。来訪スタイルや受付方法が変わった場合でも対応できるよう、固定化しすぎない設計がされています。この柔軟性が、時間が経っても評価が下がらないエントランスにつながっています。
エントランスで評価を高めている企業に共通するのは、派手さではなく、実態と向き合った判断です。この姿勢が、結果として企業全体の印象を安定的に支える要因になっています。
8. まとめ

エントランスは、オフィスの第一印象を決める重要な空間ですが、評価の軸は見た目の良さだけではありません。役割が整理され、日常的に無理なく使われ、運用し続けられるかが本質的な判断ポイントになります。
評価されるエントランスは、企業の実態や来訪スタイルに合い、社員と来訪者の双方にとって分かりやすい設計になっています。また、面積や内装投資、運用コストが契約条件や利用実態と整合しており、そのコストを説明できる状態が保たれています。
エントランスで差をつけている企業に共通するのは、派手さを追わず、役割・運用・将来の変化を前提に冷静に判断している点です。完成形を目指すのではなく、使いながら調整できる余地を残すことで、長期的な評価につながっています。
エントランスは単なる入口ではなく、企業の姿勢が最初に表れる場所です。「きれいかどうか」ではなく「使い続けられるか」という視点で捉えることが、エントランスで差がつくオフィス選びにつながるでしょう。
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