【契約】再契約料・更新料が高額化する仕組み|企業が見落としがちなコストの正体

1. なぜ更新料・再契約料が問題視され始めているのか

オフィス移転や契約更新の場面で、多くの企業が悩まされているのが「再契約料」や「更新料」の負担です。従来は一定の慣行として受け入れられてきた費用でしたが、近年ではその金額が上昇傾向にあり、企業にとって無視できないコストとして存在感を増しています。

とくに都市部のオフィスビルでは、更新時に数百万円規模の費用を提示されるケースも珍しくなく、経営者や総務担当者が「なぜここまで高額なのか」「本当に支払う必要があるのか」と疑問を抱く場面が増えています。その背景には、市場賃料の上昇やビル設備の高度化だけでなく、契約方式の変化やオーナー側のリスク管理姿勢の強化など、複数の要因が複雑に絡み合っています。

しかし、多くの企業が“仕組みを理解しないまま”更新手続きを進めてしまうことで、不利な条件を受け入れてしまう状況が後を絶ちません。再契約料・更新料の本質を正しく理解することは、余計なコストを避けるだけでなく、将来のオフィス戦略を適切に描くためにも欠かせない視点です。

本記事では、なぜ今このテーマが重要視されているのか、その背景と問題意識をわかりやすく整理していきます。
 

2. 更新料・再契約料とは何か

オフィス契約における「更新料」と「再契約料」は似ているようで制度的な性質が異なります。

混同すると契約判断を誤るため、それぞれの仕組みを正しく理解することが重要です。

(1)更新料とは|“契約をそのまま継続するための費用”

更新料は 普通借家契約 において発生する費用で、契約期間が満了した後も入居を続ける際に支払うものです。

<更新料の特徴>

  • 契約内容は基本的にそのまま継続する 

  • 契約期間の延長に対する“対価”という性質が強い 

  • 家賃1〜2か月分など、ビルごとに額が設定されている 

  • 日本特有の慣行で、法的には必須ではないが市場では一般的

つまり更新料は、「同じ契約条件で入居を続ける」ために求められる追加費用 と捉えるのが適切です。

大規模ビルではこの更新料が非常に高額になるケースもあります。

(2)再契約料|“契約を一度終了し、新たに結び直すときの費用”

再契約料は 定期借家契約 の際に発生し、従来の契約を終了させた上で、新しい条件に基づく契約を再度締結する際に支払います。

<再契約料の特徴>

  • 契約が一度“終了”する点が更新料との最大の違い 

  • 新しい契約条件(賃料・期間・原状回復範囲など)が再設定される 

  • 契約更新のたびに、ほぼゼロベースの交渉が行われる 

  • 再契約手数料や事務手数料の名目で高額になることも多い

定期借家契約では自動更新が行われないため、“再契約=ほぼ新規契約と同じ手続き” となり、費用も大きくなりやすいのが特徴です。

(3)なぜ両者が混同されやすいのか

企業側から見るとどちらも「入居を続けるために必要なお金」であるため、同じように扱われがちですが、
実際には 契約構造・交渉余地・コストの性質が大きく異なります

  • 更新料 → 契約の継続に対する“追加料金” 
  • 再契約料 → 契約の“再締結”に伴う別個の費用

この違いを理解していないと、更新時の提示内容が妥当かどうか判断できず、結果的に不利な条件を受け入れてしまう恐れがあります。


更新料と再契約料は、似ているようで役割も計算根拠もまったく異なる制度です。特に定期借家契約では、再契約のたびに条件が大きく変わる可能性があるため、企業側は仕組みを理解したうえで交渉に臨むことが欠かせません。

次章では、これらの費用がなぜ高額化していくのか、その背景となるビル側の構造を詳しく解説します。
 

3. 更新料が高額化する仕組み

更新料が高額化する背景には、ビル側の収益構造・市場動向・リスク管理が密接に関係しています。

(1)オーナーの“空室リスク”を回避するための対価

ビルオーナーにとって、テナントが退去することは大きなリスクです。次のテナントが決まるまでの空室期間は収益がゼロになり、その間も維持管理費は必ず発生します。さらに新規入居者を募集する手間、仲介手数料、原状回復の調整といったコストも避けられません。

そのため、テナントが継続して入居してくれることは、オーナーにとって非常に価値があります。更新料は、この“空室リスクを回避したメリット” を金額として回収する仕組みであり、「安定収入の継続に対する対価」として位置づけられているのです。

(2)市場価値の上昇が更新料に反映される

ビルが立地するエリアの価値が上がる、周辺の賃料相場が上昇する、建物の設備がアップデートされるといった要因も、更新料の高額化につながります。

賃料を大幅に値上げすればテナント離れを招く可能性がありますが、更新料であれば“一時的な支払い”であり、テナントも比較的受け入れやすいという側面があります。そのためビル側は、相場との乖離を埋めるために更新料を活用するケースが増えているのです。

つまり更新料は、「賃料調整を一括で行うための仕組み」として利用されることがあり、これが結果的に高額になりやすい理由のひとつです。

(3)ビルの設備投資や修繕費を回収するための仕組み

近年のオフィスビルは、セキュリティ設備、空調システム、共有スペースなどのアップデートが頻繁に行われています。これらの投資はビル価値を維持・向上させるために不可欠ですが、費用負担はオーナーだけが背負うわけではありません。

更新料は、こうした設備投資の回収手段として使われることがあります。特にハイグレードビルでは、定期的に設備を更新することで競争力を維持しており、そのコストが更新時の金額に反映されやすいのです。

結果として、「ビル価値の向上に伴うコスト増 → 更新料に上乗せされる」という構造が生まれています。
 

4. 再契約料が高額になりやすい物件の特徴

再契約料の負担が大きくなりやすい物件には、いくつかの共通点があります。

代表的なのは 築浅・ハイグレードビル です。これらは設備投資や維持コストが高いため、契約更新の段階でその価値が再評価され、再契約料にも反映されます。また、人気エリアや希少性の高いロケーションのビルは「空室率が低い」ため、テナント側よりもビル側の交渉力が強く、再契約料が高くなりやすい傾向があります。

さらに、管理会社の運営方針によっても大きく左右されます。テナント入れ替えを前提とするビルでは再契約料を高めに設定して利益を確保しますが、長期入居を優先するビルでは比較的低く抑えられることもあります。

つまり再契約料の高額化は物件特性 × 管理方針 × 市場環境が影響する構造的な問題と言えます。
 

5. 高額更新料のカラクリ|請求される理由を深掘り

更新料が高額になる背景には、「なんとなく高い」というレベルを超えた、いくつかの“仕組みとしての理由”があります。

ここを理解しておくと、提示された更新条件が妥当なのか、交渉の余地があるのかを冷静に判断しやすくなります。

(1)テナント入れ替えコストを“見えない形”で転嫁している

ビル側にとって、テナントが退去した場合の負担は非常に大きいものです。空室の間は賃料収入がゼロになりますし、新しいテナントを誘致するための広告・仲介手数料、内見対応の手間、原状回復工事との調整など、見えないコストが多数発生します。

本来であれば、これらはオーナー側が負担すべきリスクですが、長期入居テナントに対する更新料という形で一部を“前もって回収しておきたい”という発想が働きます。その結果、テナントが継続してくれる代わりに、退去時に本来発生するリスクコストを更新料として上乗せしている構図が生まれます。

つまり、「退去されると困るから更新料を高くしている」のではなく、“退去された場合に将来発生するコストを、今の更新タイミングで回収している”というのが、ひとつのカラクリです。

(2)更新タイミングを“条件見直しのフルリセットポイント”として使う

更新のタイミングは、ビル側にとって契約条件を一気に見直せる“節目”です。普段の運営の中で、毎年少しずつ条件変更するのはテナントの反発を招きやすく、実務負担も大きくなります。そこで、「契約期間の切り替わり」というタイミングに合わせて、賃料、共益費、期間、解約条件などをまとめて再設計し、その調整分を更新料にも織り込んでいく、という運用がなされます。

テナント側から見ると「更新=継続の手続き」に過ぎませんが、ビル側の視点では、「今後数年間の収益計画を組み直すタイミング」です。このギャップがあるからこそ、“更新=金額調整の一番大きなイベント”として扱われ、高額な更新料につながりやすくなります。

(3)賃料改定を“目立たせない”ための調整弁として機能している

賃料を直接上げると、テナントからの反発や、退去・移転の検討につながりやすくなります。一方で、更新料は一時的な支払いであり、「毎月のキャッシュフロー」には表面上影響しません。そのため、実務の現場では、「賃料を大きく上げる代わりに、更新料でまとめて調整する」 といった運用が行われることがあります。

たとえば、相場上昇に合わせて本来であれば賃料を 1〜2割ほど上げたい場合でも、「賃料は据え置き、その代わり更新料を家賃数か月分に設定する」という形で調整すれば、テナント側の心理的抵抗は比較的小さくなります。実質的には大きな負担増であるにもかかわらず、「毎月の支払いは変わらないから」として受け入れられてしまうことも少なくありません。

こうした“見え方の違い”が、更新料が高額に設定されるもう一つの理由です。

(4)契約書上の書き方がテナント不利になりやすい

更新料や再契約料については、契約書の条文によって定義されますが、その文言が非常に抽象的・包括的に書かれているケースも多く見られます。たとえば、「更新の際、甲乙協議のうえ別途定める」「更新料についてはその時点の条件に応じて決定する」といった表現がされている場合、具体的な金額や上限が事前に読み取れません。

このような曖昧な書き方は、更新時にビル側の裁量を広げる結果になり、テナント側にとっては不利に働くことがあります。更新の瞬間になって初めて「想定以上の金額」が提示されるのは、多くの場合、この“書き方の余白”が原因です。

本来であれば、契約締結時に「計算式」「上限」「発生条件」などを明確にしておくべきですが、忙しさや慣例により見落とされていることが少なくありません。この“契約文言のグレーゾーン”も、高額更新料を生みやすくする一因です。

(5)情報格差が金額を押し上げる

更新料が高止まりする背景には、ビル側とテナント側のあいだに存在する“情報格差”もあります。ビルオーナーや管理会社は、エリア相場、他社テナントの条件、空室状況など、さまざまなデータを把握していますが、テナント側はそこまでの情報を持っていないことがほとんどです。

相場を知らないテナントに対しては、ビル側は高めの条件を提示しやすく、テナントがそれを“当たり前の水準”として受け入れてしまうこともあります。また、テナント側に「他の選択肢(移転や減床など)の検討余地」が見えない場合、更新交渉はビル優位で進みやすくなります。

つまり、「知らない」→「比較できない」→「交渉できない」という構造が、そのまま高額更新料の温床になっているのです。
 

6. 更新・再契約時に企業が陥りやすい落とし穴

更新や再契約の場面では、多くの企業が「毎月賃料を支払っている継続行為」を淡々と続けるだけだと考えてしまいがちです。しかし実際には、更新は数年に一度訪れる “もっとも大きなコスト変動のリスクが潜むタイミング” です。

対応を誤ると、数百万〜数千万円規模の損失を生むこともあり、オフィス契約の中でも特に注意すべき局面といえます。

以下では、企業が実際によく陥る落とし穴を整理し、なぜそれが危険なのかを解説します。

(1)契約書の更新条項を読み込まないまま更新時期を迎えてしまう

多くの企業が最も見落としがちなのが、この更新条項の扱いです。「どうせ次も今の条件のままだろう」と思い込み、契約書を再確認しないまま更新日を迎えてしまうケースは少なくありません。しかし実際には、更新料・賃料改定・期間変更など、重要な条件が細かく書かれており、“読めば防げたはずの不利益” を見逃してしまうことがあります。

更新条項は、ビル側の裁量を大きく残す書き方になっていることもあり、それを理解しないと更新時の金額提示に違和感を持てないまま受け入れてしまいがちです。契約書を読み込むだけで防げる損失は非常に多いのです。

(2)市場相場を調べずに提示条件をそのまま受け入れてしまう

更新料や再契約料の妥当性を判断するうえで、市場相場の把握は欠かせません。ところが、多くの企業が相場情報を持たないまま提示条件を受け入れてしまい、「本来より高い条件で契約継続していた」というケースが後から判明することがあります。

賃料相場はエリア・ビルグレード・築年数・空室率などによって大きく変わるため、相場を知らない企業は交渉において圧倒的に不利です。情報不足はそのままコスト増につながり、長期的にみると大きな負担となります。

(3)更新を“交渉の場”として認識していない

多くの企業が、更新手続きを形式的な作業だと考え、提示された条件をそのまま受け入れてしまいます。しかし実際には、更新は数年に一度しか訪れない、極めて重要な交渉の機会です。この姿勢の違いが、更新後に支払う総コストに大きな差を生み出します。

更新の場では、賃料据え置きや更新料の軽減、契約期間の調整など、さまざまな条件を見直す余地があります。にもかかわらず「変更できないもの」として扱ってしまうと、本来得られたはずのメリットを逃すことになりかねません。

企業にとって更新とは、契約を続けるための手続きではなく、“条件改善を図る重要な交渉” であるという認識に立つことが不可欠です。

(4)更新タイミングが近づくまで準備を始めない

更新に関する確認作業や交渉準備を、契約満了の直前に始めてしまう企業は多いものです。しかしこれは最悪のパターンで、余裕のないタイミングで交渉を開始した場合、提示条件をそのまま受け入れるしかない状況に陥りやすくなります。

たとえば、「移転という選択肢を検討する時間がない」「相場調査をする余裕がない」「内部決裁が間に合わない」などが重なり、ビル側の条件が事実上の“通告”になってしまうことすらあります。

更新交渉は最低でも半年前、できれば1年前から準備しておくべき重要業務です。

(5)代替物件(移転)の選択肢を持たないまま交渉してしまう

更新交渉において、もっとも大きな交渉力となるのが「移転」という選択肢です。ところが、多くの企業が代替物件を調査せず、現オフィスを前提に交渉を始めてしまうため、ビル側からは「退去する可能性は低い」と判断されてしまいます。この状態では、テナント側に有利な条件が提示されることはほとんどありません。

代替案を持つことで、更新条件の妥当性を判断しやすくなるだけでなく、ビル側との交渉においても明確な圧力となります。たとえ移転する意思が薄い場合でも、選択肢の存在そのものが交渉力を大きく押し上げるのです。

更新交渉を有利に進めるためには、「出ていくこともできる」という選択肢が戦略的に不可欠であり、その準備を怠ることは大きな機会損失につながります。
 

7. 高額更新料を回避するための実践的対策

更新料を“仕方のないコスト”として諦めてしまう必要はありません。事前の準備次第で、適正化・削減の余地をつくることができます。

<ポイント>

  • 市場相場の把握
    :現賃料と近隣相場を比較し、更新料の妥当性を確認する。

  • 契約書レビューの徹底
    専門家を交えて条文を精査し、予見できるリスクを排除する。

  • 移転も視野に入れた交渉材料づくり
    更新料が不当だと判断した場合、移転の検討が交渉力につながる。

  • 長期的な賃料戦略の設計
    更新タイミングを逆算し、計画的に準備することで不測の負担を避ける。

更新は“交渉の機会”でもあることを理解し、事前の情報収集と準備を怠らないことが肝心です。
 

8. まとめ

更新料・再契約料が高額化する背景には、ビル側の収益構造、契約方式、立地価値、市場動向など、複合的な要因があります。しかし、その仕組みを理解し、適切な準備と交渉を行うことで、企業は不必要なコストを大幅に減らすことができます。

重要なのは、「更新料は交渉可能であり、事前対策によってコントロールできる」という視点を持つことです。契約条文の理解、市場相場の把握、交渉材料の準備をしっかり行うことで、更新・再契約のたびに生じる負担を最小限に抑え、企業の資金を本来必要な投資へと回すことが可能になります。

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