【経営】テレワーク時代のオフィス縮小判断|いつ・どこまで削減すべきか?
1.“とりあえず縮小”が危険な理由
テレワークの普及に伴い、「以前ほど出社しないのだから、オフィスは小さくしてコスト削減したい」という声が、多くの企業で上がるようになりました。
確かに、固定費である賃料を抑えられれば、短期的には大きなメリットが見込めます。しかし、オフィスの縮小判断を誤ると、逆に生産性の低下・コミュニケーションの断絶・採用力の低下といった“見えにくい損失”が生じるリスク もあります。
テレワークが進んだからといって、オフィスの役割が全て終わったわけではありません。むしろ、出社する意味やリアルな場に求められる価値が変化し、その価値に合わせたサイズ・場所・機能へと再設計することが求められています。
本記事では、「いつオフィスを縮小すべきか」「どこまで削減してよいのか」を考えるための視点と、判断を誤らないためのポイントを整理します。
2. テレワーク普及でオフィスの役割はどう変わったか
まず、テレワークが一般化した結果、オフィスに求められる役割がどのように変化したのかを整理しておきます。
以前のように「全員が毎日同じ席で仕事をする場所」という前提は崩れつつあります。
(1)“日常業務の場”から“目的のある場”へ
メール対応や資料作成、オンライン会議など、多くの業務は自宅やサテライトオフィスからでも遂行できるようになりました。その一方で、オフィスは 「対面で集まる意味があるときに使う場所」 としての性格を強めています。
例えば、新メンバーのオンボーディング、プロジェクトのキックオフ、重要な意思決定やブレスト、評価面談など、リアルならではのコミュニケーションが求められる場面です。
(2)“固定席”から“共有スペース”重視へ
フリーアドレスやABW(Activity Based Working)の考え方が広まり、個人の固定席よりも、チームやプロジェクトで使える共有スペースの価値が高まっています。
そのため、単純に席数だけでオフィス規模を考えるのではなく、「どのような活動のためのスペースが必要か」という観点にシフトする必要があります。
(3)企業文化・エンゲージメントを支える“拠点”としての価値
テレワーク中心になるほど、社員同士のつながりや企業文化が希薄になりやすくなります。その意味で、オフィスは “物理的な象徴”としての役割 も担います。
全社集会やイベント、部門横断の交流など、オンラインだけでは補いきれない接点をつくる場所としての重要性はむしろ高まっています。
3. オフィス縮小を検討すべきタイミングとは?
では、どのような状態になったらオフィス縮小を検討してよいのでしょうか。感覚ではなく、いくつかの客観的指標を持って判断することが重要です。
(1)出社率・席稼働率が安定して低い状態が続いているとき
一時的な出社制限やプロジェクトの谷間ではなく、半年〜1年程度、継続してオフィスの席が“常にスカスカ”な状態が続いているかどうか は、一つの判断材料になります。
特に、ピーク時であっても全席の5〜6割程度しか埋まらない状況が続くようであれば、縮小を本格検討するフェーズに入っていると言えるでしょう。
(2)業務プロセスがテレワーク前提で設計できているとき
勤怠管理や評価、会議運営、情報共有などの業務プロセスが、すでにテレワークを前提とした形で回っているかどうかも重要です。オフィスに依存しない運用がある程度安定している場合に限り、“余剰な面積”の見極めが可能 になります。
逆に、まだルールや仕組みが整っていない段階で縮小に踏み切ると、後から「やはり対面でないと難しい」という場面が増え、窮屈な状態に陥るリスクがあります。
(3)経営戦略と人員計画が中期的に見えているとき
オフィスのサイズは、今だけではなく、向こう3〜5年程度の採用計画・事業戦略とセットで考える必要があります。 成長を加速したいフェーズであれば、あえて余裕を持たせる選択もありますし、当面は人員横ばい・効率化優先であれば縮小余地は大きくなります。
経営戦略が不透明な状態での縮小判断は、将来の再拡張コストを押し上げる可能性があります。
4. どこまで縮小してよいのか?判断の考え方
オフィス縮小の際にありがちな失敗は、「思い切って半分にしたものの、ピーク時に席が足りなくなり、結局また面積拡張や別拠点契約が必要になった」というケースです。
どこまで削減するかを考える際は、冷静なシミュレーションが欠かせません。
(1)想定すべきは“ピーク時の同時出社率”
平常時の平均出社率だけを見るのではなく、最も出社が集中する曜日・時間帯に、どれだけの人が同時に働ける必要があるのか を基準に考えます。
例えば、平均出社率が30%であっても、火・水曜の午前中だけは50〜60%まで上がることもあります。その“ピーク値”を許容できるかどうかで、必要席数・面積が変わってきます。
(2)固定席をどこまで残すか
役員・管理職・専門職など、どうしても固定席が必要なポジションがどれくらい存在するのかを洗い出します。そのうえで、それ以外の社員についてはフリーアドレスも含めて検討し、「固定席+共有席」で何%の出社を受け止める設計にするか を決めていきます。
(3)“フル縮小”ではなく“段階的縮小”の発想を持つ
一度に大幅縮小すると、もし判断が誤っていた場合のリカバリーコストが大きくなります。可能であれば、同じビル内でのフロア減少や、契約面積の調整を段階的に進める選択肢を検討し、まずは1ステップ目として余剰スペースを削る→運用検証→さらに見直し という段階設計が望ましいです。
5. 面積を減らすだけでは不十分
オフィス縮小は、単に「面積を減らす」話ではありません。
同時に 「何のためのスペースを残すのか」 という機能面の見直しが不可欠です。
(1)残すべきは“対面で価値が出る機能”
面積を減らす際は、特に以下のような機能を優先して残す・強化する発想が有効です。
- チームで集まりやすいプロジェクトスペース
- 1on1や評価面談などのための小会議室
- 集中して作業できるエリア
- 新人・中途入社者のオンボーディング場
これらはオンラインでは代替しにくく、対面だからこそ価値が出る場面です。
面積縮小が目的化してしまうと、こうした機能が削られ、「ただ狭くて窮屈なオフィス」になりかねません。
(2)なくして良いもの・縮小できるものを見極める
一方で、利用頻度が低い大人数会議室や、ほとんど使われていない休憩スペースなど、データで見ると“実は要らない機能” が浮かび上がることもあります。
会議室予約のログや、センサーによる席利用データなどを活用すれば、感覚ではなく実態に基づいた棚卸しが可能です。
6. オフィス縮小によるリスクと、その回避策
オフィス縮小はコスト削減のチャンスである一方、いくつかのリスクも伴います。その主なものと回避策を整理しておきます。
(1)コミュニケーションの断絶・孤立感の増大
出社人数が減り、オフィスも小さくなると、偶発的な会話や雑談の機会が減少します。結果として、部署間の連携低下や、若手の孤立感が高まるリスク があります。
これを防ぐためには、出社日を揃える“チーム出社デー”の設定や、定期的な対面イベントの企画など、意図的な接点づくりが重要です。
(2)“席が取れない”ストレスによる生産性低下
フリーアドレス化と縮小を同時に進めると、ピークタイムに席が不足し、社員が落ち着いて仕事できない状況が生じることがあります。
これを防ぐには、座席予約システムの導入や、出社基準の明確化(全員が同じ曜日に来ない仕組み) を整えることが有効です。
(3)企業ブランド・採用力への悪影響
あまりに手狭で古い印象のオフィスになると、採用候補者や来客に与える印象が悪化する可能性があります。
縮小後も、エントランスや会議室など「外部の目に触れる部分」にはある程度投資し、コンパクトでも整った印象を保つこと が大切です。
7. 縮小だけが正解ではない
テレワーク時代のオフィス戦略は、「本社を小さくするか、しないか」の二択ではありません。分散・再配置という第三の選択肢 もあります。
(1)本社はコンパクトに、サテライトオフィスを組み合わせる
本社は打ち合わせ・経営機能・ブランディングに特化し、日常の作業や一部のチームはサテライトオフィスを活用する方式です。これにより、総面積を抑えつつ、社員の移動時間や通勤負担を軽減することができます。
(2)地方拠点・郊外拠点との組み合わせ
特に地方採用や郊外居住者が多い企業では、都心の面積を減らし、郊外の小規模拠点を増やす戦略 も有効です。家賃単価の低いエリアに機能を分散することで、総コストを抑えながら柔軟な働き方を実現できます。
8. まとめ
テレワーク時代のオフィス戦略において重要なのは、「どれだけ減らせるか」ではなく「どの状態が自社にとって最も生産性が高いか」 を基準に考えることです。
出社率の実績、業務プロセスの成熟度、中期的な人員計画を踏まえたうえで、段階的にオフィス縮小や再配置を進めていくことが望ましいアプローチです。
オフィスは、単なるコストセンターではなく、企業文化・採用力・生産性を支える重要な基盤です。テレワークの普及を“縮小のチャンス”とみるだけでなく、“オフィスを最適なサイズと機能に再設計する好機”と捉えることで、コスト削減と企業成長を両立させることができるでしょう。
POPULAR人気の物件
おすすめの居抜き・セットアップオフィスを探す
ベンチャー企業や居抜き物件をお探しの方にぴったりの事務所をご紹介いたします。
気になる物件がございましたら、お気軽にご連絡ください。


お問い合わせフォーム