【契約】定期借家契約と普通借家契約の違い|企業が選ぶべき契約形態とは?

1. オフィス契約は“契約形態”で大きく変わる

企業がオフィス移転を検討する際、多くの場合は立地や賃料、面積といった条件に目が向きがちです。しかし実務上、長期的に事業へ大きく影響を与えるのは「契約形態」の選択です。

特に賃貸オフィスでは 「定期借家契約」「普通借家契約」 のどちらを選ぶかによって、契約期間の柔軟性、更新リスク、原状回復負担、将来の移転計画にまで影響が及びます。近年は働き方改革や事業の変化スピードの高まりを背景に、定期借家契約を選ぶ物件が増えつつあります。

一方で、長期的な安定利用を求める企業からは普通借家契約を支持する声が根強く、どちらが“正解”というわけではありません。企業の成長フェーズ・投資スタンス・将来計画によって適切な契約形態は変わります。

本記事では、両者の特徴とメリット・デメリットを整理し、企業がどのように最適な契約形態を判断すべきかを解説します。
 

2. 定期借家契約と普通借家契約の基本構造

まずは、両者の契約が法律上どのように規定されているか、基本から押さえておきます。

(1)普通借家契約とは?

普通借家契約は、従来一般的に使われてきた賃貸契約であり、借主の保護が強い契約形式です。

<特徴>

  • 契約期間満了時に、原則として更新される(更新拒絶には“正当事由”が必要)
  • 借主は容易に退去させられない
  • 長期利用が前提となる安定性の高い契約

企業側から見ると、「安心して長く使える」というメリットがある反面、将来の移転自由度が制限されるという側面もあります。

(2)定期借家契約とは?

2000年に導入された比較的新しい契約形式で、期間満了によって契約が確実に終了します。

<特徴>

  • 契約期間満了で確実に終了(更新なし)
  • 文書での契約が必須
  • 再契約には双方の合意が必要
  • 建物オーナーにとってはリスクが少なく、最近はオフィスビルで増えている

借主から見ると柔軟性は低いように感じられますが、実は賃料交渉がしやすく、短期利用にも適しているなど、企業のフェーズによっては合理的な選択になりやすい契約です。
 

3. 両者を比較する

どちらの契約形態が自社に適しているかを判断するには、両者の特徴を同じ基準で比較して理解することが不可欠です。以下では、契約期間や更新条件、柔軟性など、企業が特に確認すべきポイントを一覧で整理します。

比較表|普通借家契約と定期借家契約

項目

普通借家契約

定期借家契約

契約期間

2〜5年が一般的

3〜10年など幅広い

更新

原則更新される

更新なし(再契約が必要)

更新拒絶

正当事由が必要

不要(満了で終了)

賃料交渉

大幅変更は難しい

再契約時に交渉しやすい

移転の自由度

やや低い

満了時に移転しやすい

オーナー側メリット

長期安定収入

空室リスク軽減、契約管理が容易

借主側メリット

長期安定利用

使い方の柔軟性・賃料交渉余地

両者は「借主の保護の強さ」か「柔軟性と市場性」かという思想の違いが根幹にあります。
 

4. 普通借家契約のメリット・デメリット

メリット

① 長く安心して利用できる

更新が前提となるため、長期的に同じオフィスを使い続けたい企業に向いています。人の出入りが多い来客型ビジネスや、立地が強みの企業には適した契約形態です。

② 賃料の安定感がある

オーナーは継続利用してほしいため、賃料が急激に変わることが少なく予算管理がしやすくなります。

③ 内装投資が回収しやすい

長期利用が前提のため、オフィスレイアウトや内装への投資をしやすく、企業文化を表現する空間づくりに向いています。

デメリット

① 将来の移転計画が立てにくい

途中解約には制限があり、事業拡大や働き方の変化に応じて柔軟に移転することが難しくなります。

② 賃料の見直しが難しい

時流や市場平均よりも賃料が高い場合でも、更新時以外に大きく見直すことは困難です。

③ オーナー側の事情で更新拒絶された場合は交渉が複雑

正当事由が必要なため、双方にとって負担が大きい場面もあります。
 

5. 定期借家契約のメリット・デメリット

メリット

① 契約満了時に柔軟に移転できる

事業拡大や働き方改革に合わせて、満了のタイミングで戦略的に移転を行えます。スタートアップや急成長フェーズ企業には非常に相性が良い契約です。

② 賃料交渉がしやすい

再契約が前提となるため、オーナーも交渉に応じやすく、市況に合わせた適切な賃料設定が期待できます。

③ 原状回復コストの予測がつきやすい

普通借家よりも契約条件が明確で、トラブルが起きにくいのも特徴です。

デメリット

① 契約期間満了後も必ず再契約できるとは限らない

人気エリアでは「次の借主が決まっている」などの理由で、再契約を断られる場合があります。

② 長期利用を前提とした内装投資には不向き

期間が短いと投資回収が難しく、デザイン性の高いオフィスを作りにくい面があります。

③ 中長期の拡大縮小計画には注意が必要

柔軟性は高いものの、事業が安定している企業は普通借家の方が適している場合もあります。
 

6. 企業フェーズ別にみる適切な契約形態

企業がオフィス契約を選ぶ際、もっとも大切なのは 「自社の成長段階に合っているかどうか」 です。同じ契約形態でも、フェーズによってメリット・デメリットが逆転することがあるため、まずは自社がどの段階にいるかを把握することが重要です。

ここでは、企業フェーズごとに最適な契約形態をわかりやすく整理します。

(1)スタートアップ・急成長フェーズ|変化への強さが最優先

人員増加や事業内容の変化が読みづらく、オフィスの規模や場所を柔軟に変えたい企業には、定期借家契約が最適 といえます。

契約満了に合わせてオフィスを移りやすく、賃料交渉の余地もあるため、スピードを重視するフェーズと相性が良い契約形態です。

<適している理由>

  • 人数増減に合わせて移転しやすい
  • 賃料交渉がしやすい
  • 事業の方向転換にも対応しやすい

(2)安定成長フェーズの中堅企業|安定運用と投資回収を重視

組織規模が安定し、中長期的に同じ拠点を使い続ける可能性が高い企業では、普通借家契約が適性 となります。

長期利用が前提となるため、内装投資の回収がしやすく、オフィス文化づくりにも向いています。

<適している理由>

  • 長期利用の安心感が高い
  • 賃料の変動リスクが低い
  • 内装投資を回収しやすい

(3)大手企業・長期戦略型の企業|目的に合わせて使い分ける

社員数も拠点数も多く、オフィス機能を複数持つ大手企業では、普通借家と定期借家を併用するケース が一般的です。

本社・基幹拠点
→ 長期運用を前提に 普通借家契約 が中心。

サテライトオフィス・プロジェクトルーム・短期用途の拠点
→ 入れ替えのしやすさを重視し 定期借家契約 を採用。

<適している理由>

  • 拠点ごとに柔軟に契約形態を選べる
  • 長期のブランド空間づくりと短期用途を両立
  • 組織規模に合わせた最適運用が可能

企業フェーズによって、契約に求める条件は大きく異なります。

  • 変化に強い契約 を求めるなら → 定期借家契約
  • 長期安定・文化醸成 を重視するなら → 普通借家契約
  • 複数拠点運用の企業 は → 併用 が効果的

このように、契約形態は “現在の課題” だけでなく「3年後〜5年後の企業の姿」 を見据えて選ぶことが重要です。
 

7. 契約形態を選ぶ際の実務的チェックポイント

契約書を見る際に企業がチェックすべき項目は以下の通りです。

(1)契約期間の長さと延長方法

□満了後の再契約条件

□再契約時の賃料見直しルール

(2)中途解約の条件

□解約予告の期間(6ヶ月・1年など)

□途中解約不可のケースもあるため要注意

(3)原状回復義務の範囲

□スケルトン戻しか、居抜き可能か

□特約条項の有無

(4)オーナー側の更新方針

□普通借家の更新意向

□定期借家の再契約姿勢


契約形態は単に記載事項ではなく、事業計画に直結する重要要素です。
 

8. まとめ

定期借家契約と普通借家契約は、どちらが優れているというものではなく、企業の規模・成長スピード・働き方・移転戦略によって最適解が変わります。

変化が激しい企業は定期借家契約、長期安定利用を重視する企業は普通借家契約というのが大まかな方向性ですが、実際には内装コストや再契約交渉、ビル側の方針など総合判断が必要です。

オフィスは企業文化や採用力にも影響する重要な資産です。契約形態を戦略的に選ぶことで、経営の柔軟性を高め、事業に最適なオフィス運用が可能になります。

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