【運用】移転後のオフィス環境トラブルと対処法|“想定外”を最小限に抑える実務ガイド

1. 新オフィスは稼働後に課題が見えてくる

オフィス移転は、計画段階・内装工事・引越しと多くの工程がありますが、実はトラブルが最も表面化するのは「移転後」です。新しい環境へ期待が高まる一方で、実際に運用を開始して初めて見えてくる問題も多く、想定外の出費や業務停滞が起こるケースも珍しくありません。

代表的な例としては、空調の効きムラ、Wi-Fiの不安定さ、騒音・音漏れ、レイアウトと実務の不一致、設備の誤作動、入退室の不便さなどが挙げられます。こうしたトラブルは放置すると不満が蓄積し、働きやすさ・生産性・社員満足度に影響を与えます。

本記事では、企業が移転後に直面しがちなトラブルを体系的に整理し、発生理由と改善策を「実務的な視点」で解説します。これから移転を検討する企業、すでに移転したばかりの企業の双方に役立つ内容です。
 

2. 移転後に起こりやすいオフィス環境トラブルの全体像

オフィス移転は、計画や工事を丁寧に進めたとしても、実際に稼働を始めてみると設計段階では気づかなかった問題が表面化することがあります。新しい環境への期待が大きい分、運用を開始して初めて見えてくる“使い勝手のズレ”は多くの企業が経験するものです。

移転後のトラブルは、大きく5つの領域に分類できます。

  • 空調・温度管理に関する不満

  • ネットワーク・通信トラブル

  • レイアウト・動線に起因する問題

  • 設備・機器の不具合や使い勝手の悪さ

  • ビル側ルールや管理体制に関する問題

これらのトラブルは放置すると社員満足度や業務効率に影響するため、早期に把握し、適切な対処を進めることが欠かせません。次の章から、それぞれの原因と改善の方向性を詳しく解説します。
 

3. 空調・温度管理のトラブル

オフィス移転後に最も多く寄せられるクレームの一つが「空調・温度管理」に関するものです。新しいオフィスであっても、レイアウトや席配置、ビル設備の仕様によって体感温度の差が生まれやすく、短期間で不満が高まる傾向があります。

特に、これらは多くの企業で共通して発生する課題です。

  • 寒すぎる/暑すぎる
  • 窓際エリアと中央エリアの温度差
  • 空調の効きムラ
  • 風の流れによる不快感

以下では、空調トラブルの主な原因と、改善の方向性を体系的に整理します。

(1)空調トラブルの主な原因

下表に、企業が移転後に直面しやすい空調課題と、その背景をまとめました。

空調トラブルの発生要因と背景

トラブル内容

主な原因

補足

温度の感じ方に大きな差がある

吹き出し口・リターンの位置と席配置が不一致

設計時の動線と実際の席配置がズレると起こりやすい

窓際の暑さ・寒さ

外気温・日射・輻射熱の影響

特に南向きの窓は気温差が大きい

部署ごとに適温が異なる

職種・作業内容で体感が変わる

コールセンターやエンジニアは体感差が大きい傾向

空調が効きにくい席がある

ビルのゾーニング構造の影響

テナントのレイアウトとビルの空調ゾーンが合わない

空調調整に時間がかかる

管理会社の集中管理

テナント側で調整できないビルの場合は特に発生

空調はビル側の設備仕様に強く依存するため、企業努力だけで解決できないケースも多いのが特徴です。

(2)改善策|段階的に進める「現実的な対処法」

空調トラブルは“即日解決”が難しいことも多いため、以下のように 段階的に対処するアプローチが効果的です。

① レイアウト・席配置の調整

最も効果が大きく、かつコストが低い対処法です。

<改善ポイント例>

  • 吹き出し口直下の席を避ける
  • 冷気が溜まりやすいコーナーを共有スペースに転用
  • 窓際席は在席時間の短い部署へ移動させる
  • 空調ゾーンに合わせて部署配置を組み替える

設計図だけではわからない“使ってみたときの流れ”に沿って再配置するのがポイントです。


② ビル管理会社への空調調整依頼

テナント単独ではできない調整は、ビル側に依頼する必要があります。

<依頼できる代表的な項目>

  • 風量の調整
  • 空調スケジュールの変更
  • 温度設定の見直し
  • ゾーンの再割当(可能なビルのみ)

ビルによって調整範囲が大きく異なるため、入居前に「調整できる項目一覧」を確認しておくと安心です。


③ サーキュレーター・スポットクーラーなど補助機器の活用

体感差が大きい場合、気流改善のための補助機器が有効です。

<メリット>

  • 即効性がある
  • 低コストで導入できる
  • 特定エリアのみピンポイントでケア可能

特にサーキュレーターは“風を作る”というより“空気を混ぜる”ためのものなので、空調効率改善に非常に相性が良い機器です。


④ 窓際席の輻射熱対策を行う

窓際の温度差に悩む企業は非常に多いため、以下の対策を検討すると効果的です。

<代表的な対策>

  • 遮熱フィルムの施工
  • 断熱ロールスクリーンの設置
  • 高断熱ブラインドの導入
  • デスク位置を窓から一定距離離す

日射の影響が強いフロアほど有効です。


⑤ 温度管理ルールの明確化

社員全員の「適温」は一致しません。
そのため、組織としての“温度運用ルール”をつくることで、トラブルの再発を防ぎやすくなります。

<例>

  • 空調設定は○度〜○度の範囲で運用
  • 個人の調整は服装・ブランケットなどで対応
  • 特定エリアは“寒がり席” “暑がり席”として明示
  • シーズンごとに見直しを実施

“見える化”されるだけで不満が減るケースも多くあります。

(3)空調トラブルの対策優先度

最後に、各対策の優先度を表で整理します。

空調トラブル対策の優先度

対策

効果

即効性

コスト

推奨度

レイアウト調整

高い

早い

低い

★★★★★

ビル側調整依頼

中〜高

無料〜低

★★★★☆

サーキュレーター導入

早い

低い

★★★★☆

窓際輻射熱対策

★★★☆☆

温度運用ルールの作成

低い

★★★☆☆

即効性とコストを考えれば、レイアウト調整 → 管理会社調整 → 補助機器導入の順で検討するのが現実的なアプローチです。
 

4. ネットワーク・通信トラブル

オフィス移転後に最も直接的な業務影響を与えるのが、ネットワークや通信関連のトラブルです。
Wi-Fiの不安定さやオンライン会議の障害は、社内外とのコミュニケーションを阻害するだけでなく、生産性・商談・顧客対応にも直結します。

特に、近年はクラウドサービスやオンライン会議の利用が前提となっているため、移転後に通信環境の問題が発生すると“業務が止まる”という事態にも繋がりかねません。

以下では、ネットワーク・通信トラブルの代表的な症状、その原因、そして実務的な改善策を体系的に整理します。

(1)ネットワーク・通信トラブルの主な原因

移転後に表面化しやすい主なトラブルを、原因とともに下表にまとめました。

ネットワークトラブルの代表例と背景

トラブル内容

主な原因

補足説明

Wi-Fiが不安定になる

アクセスポイントの配置不良・端末数の増加

移転後に端末数が想定以上になることが多い

会議室で回線が落ちる

同時接続数の増加・帯域不足

オンライン会議の普及で特に顕著

電波干渉が起こる

周辺オフィスのアクセスポイントとの干渉

ビルのフロア密度が高いほど影響が大きい

有線LANの速度が出ない

配線不備・スイッチの設定不良

旧設備を流用した場合に発生しがち

オンライン会議の映像・音声が途切れる

帯域不足・PC側負荷

会議室単体の通信設計が不足している場合

ネットワークは「設計・機器・環境」が複合的に作用するため、原因の切り分けが必要です。

(2)改善策|確実に効果が出る“現場主義”の対処法

ネットワークトラブルは感覚的に判断できないことが多いため、調査 → 対策 → 検証という流れで進めることが重要です。以下では、実際に多くの企業で効果を上げている改善策を紹介します。

① アクセスポイント(AP)の最適配置

Wi-Fiの多くのトラブルは「AP配置の最適化」で大きく改善します。

<改善ポイント例>

  • 電波が遮断されやすい柱や壁を避けて配置する
  • 執務エリアの中心に近い位置へ再設置する
  • AP間の距離が近すぎる/遠すぎる問題を調整する
  • 高密度エリアに追加APを設置する

移転前の想定と、実際の社員数・端末数が大きく違うことはよくあるため、稼働後の再配置は非常に効果があります。


② 回線・帯域の増強

特に会議室でのトラブルが多い場合は、回線自体を見直す必要があります。

<有効な対策例>

  • 法人向け高速回線へ切り替える
  • 会議室専用回線を設置する
  • 回線を2系統に分け、冗長化する
  • 帯域幅を増やしたプランへ変更する

オンライン会議の普及により、“従来のままでは帯域不足”となるケースが目立っています。


③ 有線LANの整備・配線見直し

Wi-Fiでは安定しない業務には有線LANが有効です。

<チェックポイント>

  • 古いハブ(100Mbps)を使用していないか
  • 配線が適切に成端されているか
  • 会議室・集中席に有線口があるか

営業・コールセンター・クリエイティブ業務など、速度が重要な部署には積極的に導入すべきです。


④ サイトサーベイ(電波調査)の実施

「なんとなく不安定」という状況では原因が特定できません。
専門業者による サイトサーベイ(電波調査) は、解決への近道となります。

<サーベイでわかること>

  • 障害が起きている場所の特定
  • 電波干渉の有無
  • APの最適配置と台数
  • 帯域の不足状況

調査結果をもとにすれば、無駄な投資を避けつつ、最も効果のある改善策を選択できます。


⑤ オンライン会議環境の個別チューニング

会議室単位での調整も非常に重要です。

<改善例>

  • 会議室ごとにAPを追加
  • 有線LANを標準化
  • モニターとPCの相性確認
  • マイク・カメラを業務用に変更
  • 遮音性の強化で音声品質を向上

“会議室だけ不安定”というトラブルは、会議室単独の設計不備であることが多いため、部分最適が効果的です。

(3)ネットワーク・通信トラブル対策の優先度

以下に、代表的な対策の優先度を整理します。

対策の優先度と効果の一覧

対策

効果

即効性

コスト

推奨度

AP配置の最適化

高い

低〜中

★★★★★

回線・帯域の増強

高い

中〜高

★★★★☆

有線LANの整備

★★★★☆

サイトサーベイの実施

早い

★★★☆☆

会議室単位の最適化

★★★☆☆

ネットワークは“ボトルネックが1つでもあると全体が悪化する”ため、最初に「どこが原因か」を特定することが成功の鍵になります。
 

5. レイアウト・動線の問題

新オフィスのレイアウトや動線は、設計段階でどれだけ議論しても「実際に運用してみて初めてわかる課題」が必ず発生します。
特に、社員の移動パターン・会議の頻度・部署間の連携など、日々変化する業務スタイルとの“ズレ”が生じやすく、移転後の初期段階では業務効率が低下するケースも珍しくありません。

ここでは、代表的なレイアウト・動線トラブルとその背景、改善策を体系的に整理します。

(1)レイアウト・動線の主なトラブル

代表的な課題とその背景を以下の表でまとめます。

レイアウト・動線トラブルの傾向と背景

トラブル内容

主な原因

補足説明

会議室が不足する

会議用途が多様化/オンライン会議増加

小会議室の利用が急増する傾向

動線が混雑する

部署配置の不一致/収納・複合機の位置が不適切

昼休み・退社時間帯に渋滞が発生

音が気になる/集中できない

執務エリアとコミュニケーションエリアの混在

ハイブリッドワークで音問題が拡大

印刷・郵便などの“生活動線”が遠い

設計優先で実務フローが考慮不足

小さなストレスが積み重なる

物の置き場が統一されない

収納計画が不足している

散らかりやすく、清潔感も損なわれる

レイアウトの問題は、“見た目は良いが実務に合わない”混乱が起こりやすいのが特徴です。

(2)改善策|実務に寄り添ったレイアウト再設計が鍵

レイアウトの課題は、小さな調整で大きく改善することが多い領域です。
以下に、現場で効果のある対処法を紹介します。

① 会議室の需要バランスを再評価する

移転後、多くの企業が直面するのが「会議室不足」問題です。

<具体的な対策>

  • 少人数(1〜2名)向けブースを増設する
  • 電話・オンライン会議専用ブースを追加する
  • 6名以上の大部屋を可動式パネルで分割する
  • 会議室の“予約ルール”を見直す

特にオンライン会議ブースは、増加する傾向にあるため優先度が高い領域です。


② 動線混雑の解消|“人の流れ”を可視化する

動線の混雑は、業務効率に加えストレスにも直結します。

<見直すポイント>

  • 複合機・郵便・コピー用紙・文具などの“生活動線”を中央に集約
  • 部署間の行き来が多い場所を広めに確保
  • ランチピーク時の“渋滞ポイント”を特定し、収納を移動させる
  • パンチングパネルや植栽で動線の見える化を行う

簡易的なレイアウト変更だけでも大きく改善することがあります。


③ 騒音対策とゾーニングの最適化

音問題は移転後に最も強くクレームが出やすい領域です。

<改善策>

  • 執務エリアとコミュニケーションエリアを明確に分ける
  • 電話が多い部署は窓際・壁際へ配置
  • 吸音パネル・可動パーテーションを追加
  • 集中エリアを“静音ゾーン”として運用

騒音対策は、心理的な働きやすさを高めるうえで非常に効果があります。


④ “生活動線”を業務に合わせて再設計する

プリンター、郵便物、ゴミ捨て、給湯室などは実務で毎日使う設備です。
これらが遠かったり、部署から行きづらい動線にあるとストレスが蓄積します。

<改善の方向性>

  • 使用頻度が高い設備を1カ所に集中
  • 各部署の動線をヒアリングし、最短距離を検討
  • 散らかりやすい場所を収納で補う

“働きやすさの体感”に大きく寄与する改善ポイントです。


⑤ 収納計画の見直しで散らかり防止

収納が不足するとデスクや共用部が散らかりやすくなり、働きやすさ・オフィスの清潔感・来客印象の低下を招きます。

<チェックポイント>

  • 部署ごとに“必要な収納量”を再計測
  • 通路沿いの収納は圧迫感が出ない高さに調整
  • 使う頻度に応じて収納位置を整理
  • 私物管理ルールを明文化する

レイアウト課題の中でも、収納改善は即効性が高い領域です。

(3)レイアウト・動線改善の優先度

代表的な改善策の優先度を簡易的に整理しました。

改善アプローチの優先度

改善策

効果

即効性

コスト

推奨度

少人数ブース・会議室の最適化

高い

★★★★★

動線の見直し(設備配置変更)

高い

低〜中

★★★★☆

騒音対策(吸音材・配置変更)

中〜高

★★★★☆

生活動線の再設計

早い

★★★☆☆

収納計画の最適化

早い

★★★☆☆

レイアウトの見直しは、大規模工事を伴わずに改善できる領域が多いため、移転後の課題として最初に取り組む価値があります。
 

6. 設備・機器の不具合

オフィス移転後に起こるトラブルの中でも、「設備・機器」に関する不具合は頻度が高く、日常の業務に直接影響します。
特に、新しいオフィスであっても “想定していた仕様と実際の使い勝手が異なる” という“仕様ギャップ型トラブル”が多発しやすい点が特徴です。

ここでは、代表的な設備トラブル、その背景、改善策を体系的に整理します。

(1)設備・機器トラブルの代表例

まずは、多くの企業で移転後に共通して発生する主な不具合をまとめます。

設備・機器トラブルの主な症状と原因

トラブル内容

主な原因

補足説明

電源・コンセント不足

使用数の増加/配線計画不足

PC・モニター・充電器で使用量が想定以上になりがち

AV機器が安定しない

配線の相性・OS差異

会議室ごとに挙動が異なる場合も多い

プリンター・複合機が遠い

動線設計不足

“使う頻度”を基準に配置できていない

入退室管理が使いにくい

システムの統一性不足

カードが増える・反応が悪いなど

空調パネルの操作性が悪い

ビル側仕様の問題

テナント側で設定変更できないケースが多い

これらは“設計上は問題ないが、実際に使うと不便が発生する”という種類のトラブルです。

(2)設備・機器トラブルの改善策|原因に応じた現実的なアプローチ

設備・機器の不具合は、物理的な設備の問題運用の問題が混在しているため、段階的に対処することが効果的です。

① 電源・コンセント不足への対処

移転後に最も多い設備トラブルが、電源不足です。

<改善策>

  • 電源タップ・延長コードで暫定対応
  • デスク下の配線を整理して使用効率を上げる
  • 必要に応じて電源増設工事(床・壁)を実施
  • 充電ステーションを集中管理スペースに設置

特にモニター増設やノートPCの普及により、電力需要は従来より増加しています。


② モニター・AV機器の接続不具合を解消

会議室では、AV機器のトラブルが会議の進行を止めてしまうことが多々あります。

<改善策>

  • HDMI/USB-Cなど配線方式を統一
  • 予備ケーブルの常備と定期点検
  • OS別の接続マニュアルを作成
  • ワイヤレス会議システム(Barcoなど)を導入

“会議室ごとに仕様が違う”という状況は、利用者の混乱を招くため、標準化が効果的です。


③ 入退室管理システムの最適化

入退室管理は、日々の運用負荷に直結します。

<改善策>

  • システム統合(例:勤怠・入退室を一元化)
  • スマートロック導入でカードレス化
  • センサー感度の調整やリーダー位置を見直し

特に“カードが反応しない”“扉が重い”などの小さなストレスは、社員満足度に直結します。


④ プリンター・複合機の配置最適化

意外に多いのが「複合機が遠くて使いにくい」という声です。

<改善策>

  • 利用頻度の高い部署付近に再配置
  • 執務エリア中央への集約
  • 専用のプリントステーションの設置

移動距離が短縮されるだけで、日々の小さなストレスがなくなります。


⑤ ビル設備との“調整可能範囲”を把握する

空調パネル・照明・換気などはビル側の仕様に依存するケースが多いため、「対応できる範囲」を把握することが重要です。

<代表例>

  • 空調温度は管理会社でしか調整できない
  • 夜間の空調運転には追加費用が必要
  • センサー照明の反応時間が変更できない

これらは要望を出すだけでは改善されないケースも多いため、「調整できる項目」「テナントには変更できない項目」を明確にする必要があります。

(3)設備トラブルの対策優先度

主要な対策の優先度を以下に整理します。

設備・機器トラブルの優先度

対策

効果

即効性

コスト

推奨度

電源・コンセント増設/整理

高い

低〜中

★★★★★

AV機器の標準化

高い

低〜中

★★★★☆

入退室管理の最適化

★★★★☆

複合機の配置改善

早い

★★★☆☆

ビル設備の調整依頼

無料〜低

★★★☆☆

設備トラブルは “改善すればすぐ効果を実感できる領域” であり、社員満足度の向上にも直結します。
 

7. ビル側ルール・管理体制に起因するトラブル

オフィス移転後のトラブルの中には、企業側だけでは解決できない「ビル側のルールや運営体制」に起因するものが多く存在します。

入居時には気づきにくいものの、日々の業務に密接に関わるため、ストレスや業務停滞につながりやすい領域です。ビルごとにルールや管理レベルが大きく異なるため、移転後に初めて不便さを実感するケースも少なくありません。

ここでは、代表的なトラブルの例と、その背景、改善の方向性を整理します。

(1)ビル側ルール・管理体制に関する主なトラブル

まずは、企業が移転後に直面しやすいトラブルを以下の表にまとめました。

ビル側に起因するトラブルの例と背景

トラブル内容

主な原因

補足説明

工事ルールが厳しく改善が進まない

防災・安全基準に基づく厳格運用

電源増設など小規模工事でも申請が必要な場合がある

荷物搬入・搬出の制限が多い

エレベーター・搬入口の稼働スケジュール

夜間・早朝しか使えないビルもある

管理会社の対応が遅い

スタッフ不足・契約形態の違い

申請の承認までに数日かかることも

空調・照明がビル集中管理で自由に調整できない

テナントに権限がない運用方式

稼働時間外は追加料金が発生する

セキュリティレベルが高く来客対応が複雑

ビル全体で厳格運用

来訪者の事前登録が必須になるケース

“ビルの品質=建物スペック” だけではなく、管理会社の運用ルールも含めて総合的に判断する必要があります。

(2)改善策|事前確認とルール把握がトラブル回避の鍵

ビル側が原因となるトラブルは、テナント側の工夫だけでは解決できない場合があります。
そのため、「知っておく」ことが最も効果的な対処法 になるケースが多いのが特徴です。

① 管理会社とのコミュニケーション強化

設備調整やルールの見直しは、管理会社との関係性に大きく左右されます。

<効果的なアプローチ例>

  • 相談窓口を明確化し、担当者を固定する
  • 申請手続きの手順書を共有してもらう
  • 定例ミーティングを設定し、改善要望を伝える
  • ビル内の他テナントの事例を確認する

管理会社は複数のテナントを抱えているため、情報整理が鍵になります。


② “調整可能範囲”を把握する

ビルによっては、自由に調整できるもの/できないものが明確に分かれています。

<調整可能な例>

  • 風量調整
  • 夜間空調の追加依頼
  • 照明センサーの調整(時間設定など)

<調整不可能な例>

  • 空調の温度設定(中央管理のみ)
  • センサー照明の反応範囲
  • エレベーターの設定

この“線引き”を知らずに改善を求め続けると、実現しない要望に時間が奪われてしまいます。


③ 荷物搬入・工事申請の流れを整理する

ビルによって申請フローは大きく異なります。

<対策例>

  • 申請書の種類と必要書類を一覧化
  • 搬入可能時間帯を明確化
  • エレベーター予約の手順を確認
  • 緊急時の例外対応ルールを確認

特に、内装の追加工事や設備増設の際は申請ルールの把握が必須です。


④ ルールを社内へ“可視化”しトラブルを未然に防ぐ

ビル側ルールを知らないまま業務を進めると、社員が無意識に違反してしまうケースがあります。

<効果的な対策>

  • ルールを社内ポータルで共有
  • 来客対応マニュアルを作成
  • 荷物搬入時の事前申請フローを周知
  • 夜間空調の利用ルールを掲示

ルールが明文化されていることで、社員のストレスや混乱を最小化できます。

(3)ビル側トラブル対策の優先度

代表的な対策を優先度で整理します。

ビル側ルール対応の優先度

対策

効果

即効性

コスト

推奨度

管理会社とのコミュニケーション強化

高い

無料

★★★★★

調整可能範囲の把握

高い

早い

無料

★★★★★

工事・搬入申請フローの整理

★★★★☆

社内共有・ルールの可視化

早い

★★★★☆

追加設備の相談・調整

遅い

★★★☆☆

ビル側の運用ルールは“変えられない前提”である場合が多いため、テナント側が 「正しく理解し、効率的に付き合う」 ことが最も再現性の高い対処法になります。
 

8. まとめ

オフィス移転は大きな区切りである一方、実際の運用が始まってからが本当の調整フェーズです。新しいオフィスは、働き方や動線、設備使用の実態が見えてくることで、設計段階では予想しきれなかった課題が次々と浮かび上がります。しかし、こうしたトラブルは必ずしも失敗を意味するものではなく、むしろ“最適な職場づくりに近づくためのプロセス”と考えることが重要です。

本記事では、空調、ネットワーク、レイアウト、設備機器、ビル側ルールといった主要な領域ごとに、発生しやすいトラブルの傾向と改善策を整理しました。これらはいずれも日々の業務や社員満足度に影響を与える要素ですが、適切に対処すれば短期間で改善できるものが多くあります。

また、課題の構造や対処の優先度を把握しておくことで、移転後の混乱を最小限に抑え、働きやすい環境へとスムーズに移行することが可能になります。大切なのは、移転後の数週間〜数ヶ月を“試運転期間”として位置づけ、社員の声を収集し、必要に応じて改善を繰り返す姿勢です。改善を積み重ねることで、オフィスは初期設計よりもはるかに実態に合った快適な空間へとブラッシュアップされていきます。

オフィス移転はゴールではなくスタートです。運用を通じて“自社に最適なオフィス環境をつくり上げるプロセス”こそが、移転の真価だといえるでしょう。

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